帰るべき場所、一つとなる焔

・・・ユリアシティでの首脳会談を無事に成功に終わらせ、その上でルークがオールドラントから消えることを印象付けさせることにも成功させた。そしてそんな首脳会談が終わった後、両陛下はゆっくりユリアシティに留まるより国に戻って早く行動をしたいということから会談が終わったすぐに国に戻ることになった。


















「・・・すみません、今までありがとうございました。それに急がねばならないところを俺の為に先にここに降ろしてもらうなんて」
「いや、構わぬ。むしろそなたにはこちらが感謝せねばならぬのであるから、これくらいの時間は取るのは当然だ」
「ですがこれ以上遅れる事になるのは望ましくない筈です・・・行かれてください」
「・・・うむ。ではさらばだ、ルークよ・・・」
・・・ユリアシティから飛び立ったインゴベルト達を乗せたアルビオールは一路キムラスカに向かう前に、タタル渓谷の前に降り立っていた。
そこでアルビオールの搭乗口から降りたルークは中にいるインゴベルト達に頭を下げ、その事は気にしてないと返すがもう行くようにと寂しげな笑みから返され、仕方無いというように頷き返してインゴベルトはアルビオールの扉を閉じた。






・・・そうしてアルビオールはルークが見守る中でバチカルへと飛び立っていった。
「・・・ふぅ」
「お別れは済んだのね、ルーク」
「・・・やっぱり見てたか、紫」
「えぇ、それは。もう後少しなのですし、機会を伺うのは当然でしょう?」
その姿を見届けて首を下に向けるルークの後ろから唐突に声がかかってくるが、大して驚いた様子もなく振り返るとそこには紫が扇子で口元を隠しながら上品でいて愉快げな笑みを浮かべて立っていた。
「あ~、まぁそれは紫の立場からしたら当然なんだろうけど・・・まだ後二週間近くは帰れないぞ。一応プラネットストームを止めるまではここにいるって決めた事なんだからさ」
「それは分かっていますわ。ただ私がこうして貴方に会いに来たのはどうしてこのタタル渓谷で残り時間を過ごすと決めたのかについてを聞きに来たの。人のいない場所を望んだのは分かるけれど、何故ここを選んだのかとね」
「そういうことか・・・まぁそんなに複雑な理由じゃない。単純に俺って言うか、『レプリカルーク』が変わるきっかけになった場所でこの二週間を過ごそうって思ったんだ・・・もう一人の俺と向き合って、ちゃんとした答えを出しあおうってな」
「・・・予想はしていたけれど、やはりそういうことなのね・・・貴方らしいわね、ルーク」
そんな紫にまだ戻らないと返すルークにどうしてここを残りの時間の居所と決めたのかと聞くと、真剣に自身の胸に手を当てながら理由を語っていくその姿に扇子を戻し含みのない綺麗な微笑を浮かべる。
「前は貴方のそういった部分は私からしたなら甘いと言えるような部分だと思っていたけれど・・・今となってはそれが貴方のいいところだと思えるわ。そしてそんな所に幽々子が惹かれたのだと」
「俺としちゃ男なんか選り取りみどりの立場にいる幽々子が、なんで俺なんかにって時々思うんだけどな・・・あんな立場も何もかもある美女がさ」
「得難い物を得たいと思う気持ちに立場に美醜といった外的な要素は関係ないものであるどころか、むしろ価値のある物と思うからこそそんなものなど関係無いと本気に入れ込むものよ。そして貴方に関してはもう二度と手の内に戻ることのない物になりかねない存在になりかねなかった・・・だからこそ幽々子にとっては貴方はかけがえのない宝であり、共にありたいと思える異性なのよ。そして私からしても幽々子程ではないにしても、貴方の事は得難い存在だと思っているのよ?」
「得難い存在って・・・なんか本気か冗談かは別にしても、そういうことを紫が言うってこと自体が珍しいな・・・」
「あら、私は本当のことしか言っていないわ・・・けれどそうね。たまにはこういうことを言うのも悪くないと思ったからこう言ったのよ」
そうして二人で会話を交わしていくのだが、幽々子についての会話かららしくない発言を聞いたルークは思わず首を傾げる中で紫は一層に笑みを深める。









.
2/19ページ
スキ