始まりの時と見定める境界

「・・・一先ずこれで元々旅をしていたメンバーの事はアッシュを除いて話が出来ました。後は明日からの事について話をしましょう」
「明日からって言うと・・・タルタロスの襲撃に関してか・・・」
「そうです」
そんな話題を切り替えようとジェイドが切り出した明日との言葉に、ルークがタルタロス襲撃についてだと重く察する。
「と言っても一応対策は取ります。今はこうしてタルタロスの中に兵はいますが、明日にはこのタルタロスからは兵を降ろしますのでこれで兵が犠牲になることはありません」
「え・・・じゃあタルタロスは誰が動かすんだ?」
「生け贄のような事をするのは貴方からすれば残酷かと思いますが、あらかじめ今回のタルタロスでの奉仕活動をすれば減刑をするといった旨を餌にした罪人にブリッジを任せます。多少不安が無いわけではありませんが、それも明日までです」
「うわ・・・ちょっと、それは・・・」
「こちらとしてもあまり良くない手段だということは理解しています。ですが兵を守る上でタルタロスを動かすにはこういった考えくらいしか無かったんですよ・・・そうでなければまた以前のように兵が唐突なままに我らを除いて全員殺されることになります」
「っ・・・そう考えれば、そうでもしないとどうしようもないってことか・・・」
「一応と言ってもいいわけではないでしょうが、死刑が確定していて以前でも処刑された人物達を選定しています。この事に関しては明日にタルタロスを動かすためにも、兵の命を守るためにも必要な処置だと割りきっておいてください。謡将の配下の神託の盾達はアニスの情報からタルタロスが動かないとなれば、また別の手段を取りに来かねません。そうなれば向こうの動きが分からなくなるばかりか、それこそアッシュがいても我々が全滅する可能性も出てきます」
「っ・・・分かった、そうする・・・」
しかしジェイドは対策済みだと言うが罪人を犠牲にするといった中身にルークは非難めいた声を向けるが、大を助けるために出来る限りの小を犠牲にするとジェイド自身も良くないと理解しながら決めたと返した言葉に仕方無いのだと諦める。下手に流れを変えればどうなるか分からないからこそ、ジェイドの案がまだ建設的な物だと考えるしかないのだと。
「理解していただきありがとうございます。とは言え明日になってこのタルタロスに乗っているマルクトの兵がいなくなっていることに関して、貴方が事情を知っているのはおかしなことになるので知らぬ存ぜぬで押し通すか私に聞くように話の流れを持っていってください。何かあれば私が対応します」
「あぁ」
「・・・では話もある程度済みましたし、ティアの所に行きましょうか。あまり気は進みませんがね・・・」
「・・・そうするか」
ルークが頷いた所で話をまとめるジェイドだが、明らかにティアの事を口にした瞬間に言葉通り気が重くなった様子にルークも頷き返す。
(『まぁそりゃ嫌だよな、あんな奴に会いに行くなんか・・・』)
そんな光景を前に『ルーク』も同情めいた声を漏らす。ルークに対して隠す気もなく、ティアに対する面倒そうな声色でポツリと・・・



「ふふ・・・中々に難儀しているようね・・・」
・・・そしてそんな光景を自身のスキマ空間の中、楽し気に紫は眺めていた。胡散臭くも妖艶な笑みを浮かべながら。







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