始まりの時と見定める境界

「聞いただろ、こっちのアッシュが師匠に対してすごくなついてたってのは。それでこっちのナタリアはナタリアでアッシュとは約束を交わしてはいたらしいんだけど、こっちのアッシュの事を考えるとその想いがどうかってある程度想像はつくか?」
「・・・少なくとも、私達の方のアッシュの当時の気持ちよりは薄いだろうことは間違いないでしょうね。謡将に傾倒していた事もそうでしょうし、今も謡将の元から離れないだろうことから」
「俺もそう見てる。そしてこっちの俺の話じゃ記憶を取り戻してもらうこともそうだけど、何よりも自分に目を向けてくれみたいなアピールがうざったいって言ってたよ。ヴァンがあのように貴方に構わなくなったのですから、もっと私に目を向けてほしいみたいに言ってきたんだと。この辺りはこっちの俺が師匠にほったらかしにされて、ナタリアのそんな自分を見てほしいって姿に頼る気どころかむしろ嫌気が差したから拒否ってたらしいけど」
「気持ちは分からないでも無いですね。ナタリアの事ですから悪意はまず持ってはいないでしょうが、ルークを支えるような事より自分の気持ちの方を優先した事ばかりを言うのもまた想像がつきます。そしてそういった気持ちを感じたから貴方の中のこちらのルークも嫌気が差したのでしょうね」
「そういうことだよ」
そこからナタリアに関してを話し出すルークにジェイドも話を進めていくのだが、こちらの『ルーク』についてをナチュラルに受け入れた上でその気持ちに理解を示す・・・こちらの『ルーク』は『アッシュ』と違い、まだルークの中に存在しているのは知っている為に。
「俺自身もこの一月で三回ほどナタリアの来訪を受けて対応はしてきたけど・・・いや、本当に結構キツかった・・・前の時よりナタリアがグイグイ来るし、記憶を取り戻して師匠より私を見てほしいってアピールがな・・・アッシュの事を知って以降のナタリアがこっちの俺と険悪になった理由も分かるんだ」
「貴方にこのような事を言いたくはありませんが、あくまでその時にはもう貴方は本物の『ルーク』ではなく偽物の存在であり、アッシュが敵側に回るという望ましくない物だったからですか」
「あぁ・・・多分どころじゃなく、間違いなく俺じゃナタリアをどうにか出来ないどころか反発を招くだけになると思う。ナタリアの事をどうにか出来るとするならアッシュだろうとは思う、けれど・・・」
「貴方の懸念通り、今のアッシュがそうするとはとても思えませんね。むしろ今のアッシュならばこそ、中途半端にどっち付かずな態度で惑わせない方がいいとキッパリ距離を取ることを選ぶでしょう」
「だよなぁ・・・」
それでナタリアの厄介さを話していくルークはアッシュじゃないとどうしようもないと予想はするが、すかさずのジェイドの返しの言葉にやはりと気落ちする。現在のアッシュにナタリアに対する想いはもうほぼない上に、こちらのナタリアの気持ちをどう思うか・・・そう考えればまず大丈夫だなどと簡単には言えないとルーク自身感じた為に。
「ただアッシュもナタリアの立場もあって簡単に見捨てるようなことはしないでしょうし、後で当人も接触してくるでしょうからその時に話をしましょう。こちらの『アッシュ』の記憶からどのように感じたのかも聞いた方がいいでしょうからね」
「やっぱそうなるか・・・」
その上で後で話をアッシュとするべきとするジェイドにルークも力なく頷く。繰り返すようだがこの問題の解決にはアッシュの気持ちの方が大事だとルークも考えているために。









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