焔の存在を幻想にさせぬ為に

「ティアからすればルークが戻ってこないことが悲しかったのでしょうね。ただそれでもう無理だからと諦めるような割りきりがなく、いつまでもルークへの操を立てるような形で結婚をしないという様子でした・・・確かに聞く人が聞けば美談とも言えるような物に思えるかもしれませんが、もうルークはいない物として振る舞う事が前提であるはずなのに未だに忘れきれていないと言った様子を見せられるのは感心出来るような物ではないというのにです」
「そして俺に会うたびに俺じゃない俺というか、間違いなく俺の中のルークを見ているような目を向けてきた・・・もう何年も前になるが、あの歳になるまで乗り越えたような素振りすらなかったのがな・・・」
そのままジェイドとアッシュはティアについてを話すのだが、共通して呆れを滲ませていた。今も尚ルークがいなくなったことを乗り越えたような様子がないだろう事に。
「・・・ルークとしての記憶を持つ貴方にお聞きしますが、正直なお気持ちとしてそうして想われることは嬉しいという感情はお持ちかどうかもですが、もしルークが貴方と一緒かどうかは別にしても戻っていたならルークはティアの事を愛していたと思いますか?」
「・・・多分ルークからどうこうってのはないだろうし、そもそもくっついたかどうかすら怪しかっただろう。ルークがティアに抱いていた想いは精々が親愛で、それも姉に抱くような肉親に向けるようなもんだ。まずエルドラントから帰ってきた時くらいじゃ恋仲にはなれていなかっただろうが・・・以降にうまくいったかどうかと言われても、そうはならなかった可能性の方が高いと俺は見ている」
「それは何故ですか?」
「・・・今の俺だから言えることだが、ナタリアとは別のベクトルでティアがルークに夢を見ていたからだ」
そこでもしルークがいたならティアはどうなるかを聞くジェイドに、うまくはいかなかっただろうとの言葉を返す。
「今言った通り精々がルークの中にあるティアへの気持ちは姉に対する親愛がいいところだと言ったが、それはあくまでも時間が進んでいった上でのエルドラントでのルークの感情だ。最初ルークがティアに対して抱いていたのはヴァンを襲った不審人物でもそれに頼らなければ自分がどうなるか分からないから、やむを得ず言うことを聞かなければならないという不信感しかない始まりだった。そしてそれはティアとしても似たような印象だったんだろうが、そんな似たような印象を抱いていたからこそティアは勘違いしたんだろう・・・自分はルークとともに苦楽を共にしてきた上で、ルークには自分がいないと駄目なのだと思う形でだ。だがその時からルークを見る目が何か別の期待を向けるような物ではなかったかと、俺は思っているんだ」
「ではその期待とは、何ですか?」
「今となっては、という話だが・・・自分に代わり、兄を討ってくれるんじゃないかという期待だ。ティア自身は兄と戦う事に迷いやらないとだとか乗り越えているみたいに考えていたかもしれないが、今にして思えばあいつは肉親であるが故にヴァンに対しての想いがあって暴走して行動する事が多々あった。だがそれがティア一人でヴァンを討つ結果にならなかったのはお前も知っているだろう?」
「えぇ、実際に一人で彼女が謡将を討った事などありませんでしたね」
「そうだ・・・俺と一緒にワイヨン鏡窟に行った時も、あいつは俺の手伝いはせずにただ止めてと叫ぶばかりだった。あの時ももう大分佳境といった状況であったと言えるにも関わらず、だ。結果としては以降に二度ヴァンと戦って共に勝つことは出来たが、ティアが一人であったならそもそも行動を起こしていたかどうかすらも怪しいと今の俺は感じるんだ。それこそユリアシティでルークが決意を固めねば、お前らが戦力欲しさにユリアシティにまでティアを求めて来なければ自分で立ち上がって一人でも動いていたとはまず思えなかったとな」
「・・・確かにあの時私達はルークの事を責め立ててはいましたが、何気にティアも自分は付いていかないと私達の元を離れていきましたね。それが一転して自分も動くと決めたのは、ルークの決意があったから・・・ですか」
それでルークの気持ちの移ろいかたを話しつついかにティアの気持ちがあったかの推測をアッシュは語り、ジェイドも満更有り得なくないと言ったような様子を浮かべる。









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