片隅に追いやられた難事

「すみません、このような時間に訪ねて・・・」
「いえ、大方の予想はついています・・・アニスの件が一段落したといった所ですか?」
「はい、お察しの通りです」
二人の前に立ったトリトハイムはまずはと謝ってくるが、ジェイドがアニスの事だろうと平然と返す言葉に頷き返す。
「皆様が今日再びこのダアトに来るまでに色々と動いてきましたが、大詠師の行動に関して様々に出て参りました。その結果としてアニスだけでなく他の導師守護役もいざというときのスパイになり得る人材が何人かいました」
「いざというときとは、アニスが駄目になった時の予備といったような感じですか?」
「そういった役割もでしょうが、導師がダアトにいてアニス=タトリンが休息を取っている時の警備要員として導師に変わったことがあれば報告を内密にしろ・・・といった役割であったそうです。この辺りはその導師守護役達はあくまでアニス=タトリンがスパイのメインであったことから、もしもの時以外はそれくらいでいいと重要視されてはいなかったようです。そして大詠師からは導師にいらぬ心労をかけないようにする事と、あくまで私が個人的に金を出して借金の返済をするからその事を黙ってくれる上で変わった情報があれば逐一報告してくれればいい・・・といった程度に収まっていたようです」
「・・・その導師守護役達に話を聞いたのですか?」
「大詠師と提携していた金貸しを捕縛して事情を聞いた後、正確に導師守護役がどういった認識であるのかを確認するためです。そしてその結果で出した結論としまして、もしもの時のアニスのスペアとして働かされる可能性があったとは考えてはいなかったようだと見れました」
「成程・・・そういうことならまぁ問題はなさそうですね。スパイの為に金を貸されていたなどと情報が出てきたら、ダアトの中が面倒な騒ぎになりそうですしね」
「そこについては確かに私も安心しました・・・」
それで出てきた話題は他の導師守護役についてであり、トリトハイムから口にされた情報を受けてジェイドが納得する様子に頷き返す。本心から安堵出来たというよう。
「・・・話を続けますが、他の詠師達にもアニス=タトリンや導師守護役関係の一連の事実については話していて、貴殿方と話をしたよう秘密裏に騒ぎにならぬように動くことにしていくとなりました。その上で先程の首脳会談についての話し合いの際にユリアシティで行うように動くでいいと満場一致で結論が出た後、以前に話をしたような形でのアニスのユリアシティでの活動についてを切り出しました。勿論その真の目的については隠した上でです」
「・・・それはどうなったんだ?」
「先に話に出ていたユリアシティの状況についてを聞いていたからか、案外とあっさり導師は頷いてくれました。そして他の詠師達も悪くないと私の援護をしてくれて、アニス=タトリンは渋ってはいましたが最終的には頷きました」
「最終的にはって、それまではなんで渋ってたんだ?」
「なんで自分がそんな役目をと言ったように言うのもありますが、出来るならダアトにいたいというような気持ちがあるとも言っていました。この辺りは大詠師のスパイを予期せぬ形でやらなくていいようになったからということから、ダアトで安穏としたいといったような気持ちがあるのだろうと推測出来ましたが・・・ユリアシティが荒れればダアトにも飛び火が来て面倒になりかねないから少しでも事情を知る者に活動してもらいたいということで、それならと納得してもらったんです」
「ふーん・・・ならアニスがもうここじゃ働く意味なんてないみたいな不満が出てくるまでは安心って所か。ただユリアシティが落ち着いたらそう言い出してきそうだからそこんとこはまた別の言い訳を用意するしかないか」
「そうですね・・・そこは我々にお任せください。妙な遺恨が生まれないように動いていきます」
それで改まってアニスについてを話していくトリトハイムに今度はルークが受け答えしていき、それらがうまくいった上でしばらくは大丈夫ということになった。そしてその後の事についてはトリトハイムがやっていくからと。









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