様々な決着

「・・・そういうわけでさ、前々から僕は考えてたんだよ。この男を絶対に殺す・・・それも計画の成就をさせようとしている至福の時にその真逆の地獄に叩き落としてやるってね」
「成程・・・だから貴方はロニール雪山で二人から離れたというわけですか。口車に乗せても謡将と戦ってくれそうにない二人より、明確に敵対している姿勢を見せている私達に勝ってもらった方が都合がいいからと」
「そういうことさ・・・まぁあんたらが負けてたら負けてたでで、僕一人でも行動はしてたけどね」
そんな声の後に喜悦を滲ませながら前へ歩きつつ話すシンクにジェイドが確認を向けると、肯定を返しつつもヴァンの前に立つ。
「いい気味だね、ヴァン。あれだけ見下していたレプリカに負けて息も絶え絶えになって、そして僕に殺されそうになっている」
「っ、貴様・・・私が拾ってやったから今こうして生きていられるのだぞ・・・」
‘ゴッ!’
「がぁっ・・・!?」
「兄さん!?」
そして隠しもしない嘲笑を浮かべ見下ろすシンクにヴァンは強気に言葉を吐くが、瞬間勢いよく脚の爪先で腹に蹴りを叩き込まれたことにたまらず地面に前のめりに倒れこみ、ティアが悲痛な声を上げた。だがシンクはそんなティアになど構わず続けてヴァンの後頭部を足で踏みつけ、グリグリと地面に押し付けていく。
「拾ってやった・・・言っただろ?自分勝手に僕達を造って捨てようとしたのを自分が助けたんだみたいに言われたって、僕からすればよりイラつくだけだし・・・そもそもあんたアリエッタの事とか人の目がある場所じゃさも他と同じみたいに振る舞ってたけど、人目がないところじゃ僕を散々扱き下ろしてきたじゃないか・・・!」
「ぐぁぁぁっ・・・!」
そのまま今までの鬱憤やら思い出やらを怒りと共に口にしていくシンクに、ヴァンは力が残っていないからだろうが痛みに声を上げるしか出来ていなかった。



(・・・こういうことか・・・)
(『えっ?いきなり何を納得してるんだよ?』)
(いや、精々相討ちが師匠達との戦いの最高の結果と紫から聞いちゃいたけど正直アッシュにティアにガイの二人以上が協力しても、師匠と戦うどころか相対出来るシチュエーションなんて想像出来なかったんだよ・・・これまでの間で仲良くやれるなんて事もなかったのもそうだしティアが戦いに積極的じゃないのを踏まえると、シンクが何かしら自分の為にって俺らを利用するだとか導くくらいしないとそこまで辿り着けたかどうかすら怪しいんじゃないかってな)
(『あー・・・今そう聞いて確かにって思ったわ・・・』)
・・・そんな光景を見つつ内心でルーク達は会話を交わし、『ルーク』は何とも言い難そうに納得してしまった。ルークの言うよう、シンクの裏での動きが無かったら本来ヴァンと戦うことすら出来なかったのではないかということに。
(『つーかそう聞くと恨み骨髄までって感じにシンクはオッサンの事を嫌ってるんだな・・・』)
(というかそもそもを言うなら俺達の方のシンクも別に師匠に忠誠を誓ったからって訳じゃなくて、どこにいるのがマシかってくらいで動いてただろうからな・・・そんなんだからどっちのシンクからしても師匠に好印象を抱いていたとかって感じじゃないのは確かだったろうし、そもそものこっちの師匠が表向きの事から取り繕ってたってだけでレプリカって存在をかなり見下してたのは確かだからな・・・今言ったような事をされてたのも相まって、シンクからしたら師匠に反旗を翻してやるって決めたんだと思うよ)
(『俺やティア達の違いくらいしかないって思ってたけど、そうじゃなかったんだな・・・』)
その上でシンクもまたヴァンの違いにより変化した人物だからこそと、二人は目の前のシンクを見ながら感じ入るように漏らした。ヴァンを躊躇いなく踏みにじり続けるその姿を。









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