始まりの時と見定める境界

「なぁお客さんよ。バチカルに行くのは無理だが、ここから徒歩でバチカルに向かうのは時間がかかりすぎる。この辻馬車はエンゲーブで止まるから、そこでキムラスカ方面に向かう辻馬車を見付けて乗せてってもらいな。そっちの方が安全で時間もかからないだろうからな」
「・・・そうね、そうさせてもらうわ。貴方もそれでいいわよね?」
「あぁ、これにまた乗んなきゃなんねぇのも嫌だがずっと歩きっぱなしの方が嫌だしよ(と言うかむしろそうでもしないと、エンゲーブに行く理由が無くなるんだよな・・・取り敢えずは感謝だな、御者の人がそう言ってくれて)」
そんな中で御者がエンゲーブでの辻馬車の乗り換えについてを切り出し、ティアが仕方無いと言いルークも同意するのだが内心では良かったと感じていた。


















・・・それでルーク達を乗せた辻馬車はしばらくした後に、エンゲーブへと辿り着いた。



「・・・ここがエンゲーブか・・・」
「さて、私はバチカルに向かう辻馬車を探してくるわ。貴方はこの辺りで待ってて。付いてこられても迷惑だから」
「あっ・・・行っちまった・・・」
・・・そうしてエンゲーブの入口で興味深そうな視線で辺りを見回すルークに対し、ティアは言うだけ言うとさっさと場を離れていく。ルークが手と声を出していた姿になど全く気にも止めない様子で。
「・・・あれがこちらのティア、ですか」
「おっと・・・いきなり来たな、ジェイド・・・」
「すみません、驚かせてしまったようで。ですが貴方達と早めに顔を合わせておきたかったので待機していたのですが・・・来てすぐにあんな姿を見るとは流石に思っていませんでしたよ・・・」
「あぁ、まぁそりゃな・・・」
そんな時にジェイドが村の中から現れ待ちながら様子を見ていたというように話し掛けてきたが、ティアの様子に疲れたように眼鏡に手を当てる姿にルークも何とも言いようが無さそうに声を漏らす。
「・・・ずっとあの様子だったのですか、ここに来るまで?」
「あぁ・・・隠しても仕方無いから言うけど、最初っからあんな感じだよ。師匠に対して前と違う信頼を向けたような言葉を言いながら襲ってきて、それでタタル渓谷に飛ばされて以降は俺がそれを邪魔したのが気に入らないからか単純に師匠以外に愛想を振り撒くつもりが一切ないのか最低限の会話しかしようとしてこなかったよ」
「それは、また・・・」
「正直、ジェイドもそうだけどイオンにも下手するとあんな感じになるんじゃねぇかって不安があるんだよ・・・師匠に傾倒してるってのはよく分かったけど、それが他の事は全てどうでもいいみたいな風な感じに考えが移行してたらそういった事になる可能性もあるかもしれないって・・・」
「・・・否定出来ない所が嫌ですし、もしそうなったとしたら面倒ですが・・・表面上は取り繕っていてもティアにとって気に入らないことをしたら、即刻で態度を変えるという展開も有り得そうですね。そう考えると・・・」
ジェイドは少し同情的なように声をかけるが、ルークから返ってきたもしもの可能性にまた一層面倒だといったように頭に手を置く。一応前はティアに終始敬意を払われていたが、それもこちらのティアにはどうなるか分からないというように理解して。









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