始まりの時と見定める境界

(『・・・ま、そこに関しては俺からすりゃどうでもいい。それよっか信頼を得られるかはともかくとしても、こいつの手綱を握りながら裏切らせずに事を進めるのは苦労するってことはちゃんとしねぇとまずいって考えとこうぜ』)
(・・・あぁ・・・)
そんなようになったルークに気持ちと考えを切り替えるようにと『ルーク』は言うが、すぐには気持ちは切り替えられないと言ったように浮かない返事を返す。






・・・そんな風に表向きはどちらも言葉を発することなくタタル渓谷を降りていき、前のように辻馬車の御者と出会った。その時にまた金について話になったのだが・・・
(『恩を押し付けるつもりはないって考えでやってたつもりだけど・・・やっぱりすげぇムカつく・・・!』)
(我慢してくれ・・・ある程度予想はついてたけど、俺も同じような気持ちなんだからさ・・・)
・・・その時に「金ならこれでいいか?」とぶっきらぼうに振る舞いつつ金を出したルークに対し、礼を言わないのはまだしも「流石貴族ね、そんなお金をいつも持っているなんて」とむしろ見下すような視線と声を向けてきたのだ。
そんな様子に苛立ちを滲ませる『ルーク』に、否定を返せないどころか同じような気持ちだとルークも疲れたように口にした。


















・・・それで辻馬車に揺られながら進むことになった二人だが、当然ルークが演技をしているのもあって二人の間に会話などなかった。そんな空気の中で辻馬車は進んでいくのだが・・・



「・・・これはグランコクマ行きの辻馬車?」
「あんたら、バチカルに行きたかったのかい?俺は行き先がグランコクマだったから、てっきりあんたらもグランコクマ行きだって思ってたんだが・・・」
「っ、最悪ね・・・よりにもよってまたこんなことになるなんて・・・」
(『こいつ明らかに御者への不満と一緒にこっちに向けて言ってるよな、この言い方・・・』)
(だろうな・・・)
・・・それまで何も言ってこなかった辻馬車の御者も二人の沈黙を見かねたのか、何気にもう少ししたらエンゲーブに止まるよと声をかけてきたのだがそこでティアの機嫌が一気に下降した。分かりやすく不機嫌になったと言わんばかりにだ。
そして出てきた言葉と一瞬向けられた視線に『ルーク』はその意図に気付いて苛立ち、ルークもまた否定を返せなかった。
(・・・それよっか今は別の事を気にするぞ)
(『だな・・・タルタロスだったか?それが来てねぇんだよな?』)
(あぁ・・・多分ジェイドが行動したんだと思う。漆黒の翼を無理に追い掛けずに、ローテルロー橋を壊さないようにって考えて)
しかし少し慣れた二人はあまり引きずらずに次の話題・・・タルタロスと漆黒の翼が乗った馬車が来なかったことに焦点を当てる。
(『ただそれだと、ジェイドがそうするメリットはあるのか?前と違う感じにしてよ?』)
(元々漆黒の翼に逃げられて橋を爆発させられたのはそもそもジェイドからして不手際なんだよ。だからその不手際をもう一度しないようにって感じなんだろうけど、漆黒の翼が捕まったかあえて泳がしたのか・・・ちょっとジェイドに会ってみないと分からないんだよな・・・)
(『単純にそいつらに逃げられたって可能性はねぇのか?』)
(それはジェイドの性格もそうだけど、漆黒の翼って次第に俺らの味方寄りって感じになってったから先を見越してジェイドが接触してる可能性もあると思う。これはちょっとまずジェイドに会ってからだな)
(『だな。何が起きたか今の状態じゃ知りようもねぇしよ』)
『ルーク』はそんな以前との違いからメリットについてを聞き、次第にジェイドが漆黒の翼に何かしていると確信して話を進めるルークに一先ず納得する。まずは当人に聞いてから話をするべきだと。









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