影で動き影で処する

「まぁティアについては一先ずはよろしいでしょう・・・後はグランコクマに行く前にここでゆっくり休むべきですが、その後のロニール雪山のセフィロトに行った後はイオン様もそうですがアニスも置いていった方がよろしいでしょう。謡将との戦いでは我々が先陣を切る予定でいるとは言え、戦闘経験が以前より少ない彼女には酷な戦いになるのは間違いないですからね・・・もう彼女にはイオン様と同じく戦線離脱してもらうと共に、その後の生活に集中してもらった方がいいでしょう」
「・・・確かに師匠との戦いで死んでしまったら元も子もないけど、その分辛い時間ってのは長く続くんだろうな・・・」
「それでも前の私達の知るアニスよりは断然マシですし、そもそも彼女がイオン様に常につく導師守護役になったのはモースの狙いがあってのことで、それがなかったなら本来ならタトリン一家は借金の返済で首が回らなくなって食事すらまともに取れない生活になっていたことが想像出来ます。それでも両親は自分達がやったことだからと受け入れていたかとは思いますが、少なくともアニスとしては絶望しかなかったでしょうね。何せ物心ついた時からそんな生活をしていたのでしょうから」
「っ・・・だからまだマシだっと思うしかないってことか・・・」
そんなティアについてよりとアニスについてを再び話題に出すジェイドにルークが複雑さを滲ませるが、それでもマシだと言うその理由を語られたまらず苦い顔になってしまう・・・モースの行動が無ければそもそものアニスは今頃は両親によって、希望も何もない暮らしをしていた可能性があったということに。
「・・・ともあれ、もう俺達はアニスに対してやることはやり終わった。そして俺達はもう事が済んだならそれ以上の事をするつもりもないし、しない方がいい。一時期は俺かジェイドがアニスを引き取るかどうかで悩みはしたが、所属的な意味で両親と違うダアトの人間でなくなるのは気が気でない状況になるだろうということから無理矢理離すような事はしない方がいいという上で・・・両親をどうにか出来ない以上はもうこれが最もいいだろうという話し合いをしたからお前も分かっている筈だ」
「それはな・・・」
そこに更にアッシュも言葉をかけてきたことに、若干ルークは遠い目を浮かべる。






・・・トリトハイムと話したことに関してサクサクと表向きは進ませてはいたが、実際は見えないところでタトリン一家に関してどういったように進ませるのかを苦心して考えていった。それはやはりアニスの両親に対する思いがあるからである。

アニスが何だかんだで両親を見捨てる事が出来なかったのはその想いがあったからこそであり、自身が苦しむことを承知で動いていた。だがそれがあったからこそ自分達やシェリダンの人達、そしてイオンといった面々を苦しませることとなった。

そんなアニスに両親の事を諦めるようにだったり、アッシュが言ったようにジェイドも含めたどちらかが引き取るとするとしたとしても、いつか何かの弾みで両親への思いから行動を起こしかねない・・・それも良くない方向での行動を起こす可能性があると見ていた。具体的には両親の元に心配だからと戻るだとか、借金を勝手に返そうと金を盗んだりとだ。

勿論金を盗むまでは行き過ぎにしても絶対に起こらないとは限らない上、両親とずっと離ればなれになって会えないということは何かを起こしかねない危険性は燻ったままになってしまう・・・そういったことを考えた時に二人のどちらかが身を引き受けるのは止めにするとなり、その代わりとして様々な防止策を考えてトリトハイムに話したようにしようとなったのである。そして以降はアニスの為に動くのは止めようとも・・・









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