影で動き影で処する

(『多分っつーか、あめぇみたいな事は人に聞かれたら言われちまうんだろうな・・・』)
(ただこうでもしないと両親の方が問題というか、色々とってのがあるからな・・・借金の事は犯罪じゃないから裁判にかけられないってのが何よりの問題なんだし・・・)
それで『ルーク』が何ともといったように漏らすのに対し、ルークも同じようにやはり両親にあると返す。






・・・借金は犯罪ではない。タトリン一家の中でも根幹にして、最も厄介な問題が何かと言われたらやはりこの一言につきた。

借金はあくまで金を借りるだけで、そうしたら犯罪となるような事ではない。むしろ両親の性格ならそうだったならそうしてなかっただろうが、そうではなかったから借金をしていったのだ。自分達が金を借りて使えば皆幸せになれるのだからと。

だが肝心の借金を返すことを念頭に置いていないというか、いつまでも貸した側は待っていてくれるとでも、いくらでも自分達に貸してくれるとでも思っていたのか・・・両親はある程度までの額に来たらもう借りない方がいいし、返すことに専念した方がいいと思うこともなかった。そこをモースに突かれてアニスが苦しむことになり、アッシュが戻ってからしばらくしてまた借金をすることになったのだ。

それでもモースがバックにいた頃のような無尽蔵な借金は出来なかった為に借金返済の為にタトリン一家は人生を捧げることになって何とか完済は出来たが、もし借金の額によってはもう返せる見込みはこいつらにはないから犯罪と見なす・・・といったような世界だったなら、むしろアニスは両親から解放されていた可能性は無かったとは言えないだろうし楽になっていた可能性は十分に有り得ただろう。

しかしそうではないからこそ両親達は無知に活動してきたし、無知で娘を始めとした者達に対する悪い影響を与えてきた上で・・・ハッキリとこういう罪があるからと裁かれることなく、愚行を繰り返していくばかりとなった。

・・・良い人間であることが悪いことであるというわけではないし、むしろいいことではあるだろう。しかし行き過ぎた無知は罪ではなくとも、利用されたり害悪になったりと百害あって一利なしとなる裁かれない悪と見なされる事もある・・・それだけ人の世というのは難しい物なのだ。

だからこそそれを繰り返させないようにするためには、タトリン夫妻から話にしたような形でアニスを解放しなければならないと見たのだ。例えアニスが望むような事にはならなくともと・・・


















・・・そうしてしばらくの時間をトリトハイムと話すことで費やし、ルーク達がダアトから出てからの流れについてを決定させた。それで解散となり一晩をゆっくりと休んだ後、再び導師の私室に集まった。

その際には一応というかちゃんとヴァン達の事も調べていたアッシュは満足いくような成果は見付けられなかったと明かし、そしてトリトハイムも昨日話した事についてなどイオンやアニス達におくびもその様子を見せることなく話を進ませていった。これからどうやってダアトをまとめていくのかと。

そうして時間は進み、夕方といった時間になって話も落ち着いた所でアッシュが先導する形でセフィロトへと向かうことになった。自分が入り口を知っているということで。









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