影で動き影で処する

(『完全に呑まれてんな、ジェイドに・・・』)
(トリトハイムさんとしちゃアニスのスパイの件を穏便に済ませたいって気持ちがあるから、下手にジェイドに逆らわない方がいいってのもあるんだろうけどな・・・あんまり変に反論するとマルクトっていうかジェイドが妙な形でピオニー陛下に話をするんじゃないかって思ってる可能性について危惧してもおかしくないし)
(『その辺りを含めて意識させたジェイドが流石って事なんだろうけどな』)
そんな光景にルーク達はそっと心中で話し合う。この流れはジェイドだけでなく自分達が思い描いた物であり、その流れにトリトハイムが完全に翻弄されているということを。
(・・・まぁジェイドも言ったけど、アニスがやったことって本当ならマルクトに被害を与える情報をモースに漏らしたってことはそもそも罪だって事を考えるとな・・・)
(『そこに関しちゃガイ達と同じように、それを裁くとかって出来ない状況が整ってしまったみたいな感じだったからなんだろうな・・・イオンの事に関してもな・・・』)
ただそこで二人はアニスの罪が本来なら軽くないのだということを、複雑さに滲む声で話し合う・・・






・・・今二人の間で話題に出たが、アニスのやったスパイという行為は普通なら情状酌量の余地があるようには思われるかもしれないが、そこで被った被害・・・タルタロスが襲われる事になったきっかけであったり、シェリダンが襲撃される事態になったり、ルーク達が行き先を察知されたことで捕縛されたり、何よりイオンを連れ去ってモースに殺されるような結果になってしまったことと・・・いくら同情出来る要素があったとしても、天秤にかければ裁かれなければおかしいと間違いなく言えるくらいには罪の質は酷く高い上に数は多かった。

特にイオンの死に関してはダアトからしたなら、これだけで極刑すら有り得てもおかしくない事柄だったと言えた。何せやったことがダアトの最高地位にいる導師を殺すための段取りを組んだこと、それも罪人として投獄されて大詠師の地位を剥奪されていたモースに従う形でそうしたのだから・・・これがハッキリとダアト全体に広まっていたなら、どう低く見積もっても間違いなくアニスは表に出られなくなる生活を送っていたのは明らかだった。

しかしそうならなかった理由は現場にいた目撃者はモース達を除けばルーク達以外にはいなかったことと、トリトハイムに報告した時に混乱続きであったことから情報の制限がなされていたことに加え、何よりナタリアと同じようにヴァン達を倒したという功績からアニスはティア共々オールドラントを救った英雄だというように祭り上げられたのだ。そういった罪を表に出され、裁かれる事なくだ。

その上で空気的にアニスの罪を明らかにし、アリエッタとのこともあってルーク達から離れるべきではないし離すべきではないといった雰囲気があったのもまた事実であった。ここでアニスを連れていかないのはアリエッタの気持ちも相まって良くないことだと。

・・・イオンの事だけでも本来は裁かれれば命が危ぶまれるような事をしていたアニスだが、その他諸々の事も含めてアニスは場の雰囲気に流される形でそれらをほぼ無いような物として処理された。ただそれで将来的にはまた両親のやったことで苦しむという、何とも言えない結果になったのだが・・・今回はスパイの件を紐解く事で、別の辛さを味わう代わりに別の苦しさから解放しようとルーク達は考えたのだ。









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