影で動き影で処する

「ここで彼女ら家族にスパイの件についての追求及び断罪を求めるのはこちらからすれば簡単です。しかしそうすることはこれからのマルクトとダアトの関係を考えるとあまりよろしくないでしょうし、大詠師がそんな手段を取っていたと言うのを大々的に発表すれば尚更です。預言の為にやったことだからといったように言えば、確実にダアトの内外から多くの批判は来るでしょう」
「っ・・・そんなことは私としては望みはしません・・・」
「えぇ、こちらも同様です。ただそこについてを突かないからと言って、タトリン一家についてを何もしないというわけにはいかないでしょう・・・事の起こりはタトリン夫妻の考え無しの行動からになりますし、アニスはどうなるかを承知の上でスパイをしていましたし実害も被害は少ないながらも被りました。ですからこそ表向きの断罪を求めない代わりに、タトリン一家には別の処分を下す事を求めます」
「別の処分とは・・・」
「簡単な話としてタトリン夫妻とアニスを分けるべきかと思います。ダアトに勤務する側とユリアシティに勤務する側にとです」
「えっ・・・何故そこでユリアシティが・・・?」
ジェイドはタトリン一家についての処分の危険性について告げた上で、どうするのがいいのかを口にするがトリトハイムは怪訝そうに眉を寄せる。ユリアシティの名前がいきなりここで出てきたことに。
「これから先の遠くない未来として、外殻大地の降下が済めば否応なしにユリアシティは人目に晒される事になるでしょう。それは昔から汚泥に呑まれず存在し続け、外殻大地が空に浮かんでからもずっとそこに在り続けた事から大方場所としては外殻大地上では海の上に位置する場所で、魔界に降下したなら外殻大地上に無かったユリアシティがポツリと唐突に海の上に現れたとなるのは想像が出来ます」
「ま、まぁ確かにそうなるでしょうね・・・」
「えぇ。その点ではこのダアトも大陸という名を冠していてそれなりの広さはあるとは言え海に囲まれているという点では同じですが、ユリアシティの特徴として言えることはダアトとは違い精々島と呼べる広さしかなく船しか移動手段はなく・・・天然の隔離場所にもなり得ます」
「っ!・・・つまり、どちらかをユリアシティに置いて片方との距離を離そうということですか・・・」
「えぇ、そうです。そしてユリアシティに行かせるのはどちらが妥当かというのは、断然にアニスになります」
何故ユリアシティの事を口にしたのかと言えば、ダアトから遠く離すため・・・その事にトリトハイムもハッとしたような表情を見せる中、ジェイドは断然にアニスを向かわせるべきと言い切る形で口にした。
「何故かと言えば両親に関しては隔離の政策の中にそのまま加えるのが妥当だからです。それに加えて言うならユリアシティは魔界に外殻大地が降りた後の立地がどこにあるかは詳しくは分かりませんが、アラミス湧水洞にあるユリアシティに向かう為の譜陣も魔界に降りた後は使えないものとしてまず間違いないでしょうから、ダアトの方々と連携して事に当たって食料などの輸入を直接行うであるとかキムラスカやマルクトの船を受け入れる中継地点といった港としての役割を持たせるだとかをしなければ、ユリアシティは瞬く間に孤立する以外に無くなります。そしてそういった事を避けるためといった名目の為の一団を派遣する中に、ユリアシティの事を少なからず以前に来たことから他の者より知っているであろうという名目でアニスを派遣するといったようにすれば、イオン様にもさして怪しまれることなく導師守護役からユリアシティへと配置することは出来るでしょう」
「成程・・・確かにそれなら両親を派遣するための名分を無理に探すよりはアニス=タトリンを送ると言った方が納得が得られそうですね・・・」
その理由はユリアシティに向かったことがある経験を利用するため・・・そう説明していくジェイドにトリトハイムも納得して頷いた。ユリアシティの立場もあって、それならば無理はないと。









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