影で動き影で処する

「ですからこそそちらに関しても対策は必要になるかとは思いますが、アニスがスパイをすることにした・・・いえ、せざるを得ないと判断をした程の借金を抱えたというのにそれを自身らのせいだともちゃんと返せるとも、様々な事を考えていないであろう両親のような方々をどうするか・・・その対応を誤れば、今言ったような事になりかねないかと思われます」
「・・・確かにこれだけの金額など単純に見ても数年単位で働いても返しきれる物ではないのに、そういったことを考えないとなると迂闊な事は出来ませんね・・・」
ジェイドはそこでいかにアニスの両親達のような者達についてを考えるのかと述べると、トリトハイムも重く頷き返す。そうさせないことが性格上、どれだけ難しいかについてを感じて。
「でもそれをさせないって難しいだろ?今さっき言ったようにダアトの人の出入りを制限なんて出来ねーんだろうしよ」
「えぇ、それは確かです。ですが発想を逆転させれば少なくとも、今現在問題があると見られている者達に更なる問題を起こさせないようにする事は比較的楽になると思いますよ」
「えっ?ってことは何かお前には考えがあんのか?」
「一応ですが」
「っ!?」
ルークもその難しさについてを感じたというように漏らすのだが、ジェイドが考えはないとは言わないと言ったような言葉をあっさり口にしたことにトリトハイムは驚愕に目を丸くした。
「落ち着かれてください。この案に関しては実用的かどうかはまず聞いてから判断してはいただけませんか?」
「は、はい分かりました・・・お聞かせください、貴方がどうするべきかと思っているかを・・・」
「そんなに難しい問題ではありません。そういった方々をそんな業者と接触出来ないような環境に押し込めた上で働いてもらうというのが出来ればどうにかなると見たのです」
「そ、それだけ・・・ですか?」
ジェイドはその様子を見て落ち着かせるような言葉を口にするが、結論をシンプルに口にするとトリトハイムはポカンとしたような様子を浮かべた。
「確かに言葉にすればこれだけと聞こえるかもしれませんが、今話したような者達の行動を何もせずに野放しで後は何もしないから大丈夫だと信用出来ないのはそちらもお分かりでしょう。その上で行動を抑制したいとなれば今言った事くらいしかありませんが・・・他に何か思い付く代替え案はありますか?」
「うっ・・・そ、そう言われると他には、何も・・・」
「えぇ、そうです。事実私も他には人道的な解決案など思い付きませんでしたし、人道的ではない解決案も実行に移すのはとても現実的とは言えませんからね」
「・・・ちなみに、その人道的ではない解決案とは?」
「有り体に言ってしまえばダアトからの追放ですね。借金という個人の権限を行使しているだけなのにそこまではと言われるでしょうし、ダアトにいたいという方も勿論いらっしゃるかとは思いますがだからこそ人道的ではないと申し上げたのです・・・様々に理由付けして強引に外に送り出すという事をする必要があるのですからね」
「そしてそうしてしまえばダアトというかローレライ教団が非難を浴びることになりかねない・・・確かに人道的にもですが、教団の評判も考えればあまり取るにはよろしくない手段と言えるでしょうね・・・」
しかしそうシンプルな話ではなく妥当な手段がこれくらいしかないと人道的という言葉を引き合いに出し、非人道的な事として追放についてをジェイドが言うとトリトハイムも確かにそれはまず望まれないと理解をした。手段としては無いとは言わないが、色々な意味であまり有用ではないのだと。









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