始まりの時と見定める境界

(・・・考えられるのは表面上は敵対してるように見せていないだけか、もしくは他の三人とは違う形の敬意をヴァンに抱いているか・・・後者ならともかく前者だったなら、こちらに引き込みたいところだが・・・今の俺はまだ下手な事は出来んから、しばらく様子を見るしかないか・・・)
しかし考えを深める事は出来ても、実際には動けないとアッシュは歯痒い思いを抱いていた。今の自分はまだ他の面々同様にヴァンを盲信する身で、そうでないと明らかにするには早すぎるために。


















・・・それで少し時間が経ち、夜のタタル渓谷。
(『おい、おい!起きろ!』)
「ん・・・あ・・・」
(『ようやく起きたか・・・』)
(あ・・・悪い、お前はもう起きてたんだな・・・)
倒れていたルークの中で『ルーク』の起こす声に反応し、ルークはゆっくり起き上がり頭に手を当てながら礼を心の中で述べる。
(『気にすんな・・・つーかこいつがティアか。実際に顔を見るとおんなじくらいの女にしか思えねぇけど、性格的にめちゃめちゃキツいってことだよな・・・お前の所の奴と比べてもよ』)
(あ~・・・それは否定出来ないな~・・・)
それでそのまま近くで倒れこんでいるティアの姿を見つつ『ルーク』が口にした言葉に、何とも言いがたそうにルークは返す。ティアの性格がよりキツくなることに。
(『・・・いっそのこと、無視していい気がしてきたぞ・・・紫に頼んで一応金はある程度都合はしてもらってるんだったろ?』)
(あぁ、十万ガルド程な。ティアにあの形見の宝石を手放させないようにって思って渡してもらったけど、流石に無視する訳にはいかないって・・・今後の事を考えるとティアに協力してもらわないとならない場面があるし・・・)
(『だよなぁ・・・』)
そんなティアをいっそ放っておきたいと言い出す『ルーク』だが、それは出来ないと微妙そうに返すルークに力ない声を漏らす。これからの事を考えると気が重いとは言っても、ティアが必要な人物だということに変わりはないと分かっているために。
「ん・・・んんっ・・・」
(あ・・・起きる・・・んじゃしばらくティアと話すから、ちょっと出来るだけ黙っといてくれよ)
(『おう』)
そんな時にティアから聞こえてきた悶えるような声にルークは『ルーク』に黙るようにと言い、それに頷き返して黙りこむ。


















・・・それで起き上がったティアと話をし、前のようにタタル渓谷を共に降りていく事になったのだが・・・
(『・・・予想はしてたけど、それ以上にきっついな・・・こいつの性格だとか発言・・・』)
(正直俺もここまでとか思ってなかった・・・多分前の俺だったらやばいくらいキレてたと思う・・・)
(『俺もっつーか、俺だったらこんなのとうまくやってけるなんて思えるとか思えねぇとかそんなちっちゃい話じゃねぇ・・・マジで許されるなら今すぐこいつと離れたくてたまらねぇよ・・・』)
・・・ほんの数十分程度一緒にいるだけだが、もう既に印象は最悪・・・庇いたいという気持ちがあるはずのルークさえ拒否を返せない程だった。自分の後ろを不機嫌そうに歩くティアに対し、好印象など抱けないと。









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