影で動き影で処する

「ただそこに加えて言わせていただくなら、聞いた話によればこのパダミヤ大陸にもセフィロトが存在するとお聞きしました。その事からセフィロトへ向かう為にもまだダアトに留まる必要がありますが、話にも出しましたようイオン様はダアト式封呪の扉の封印を解くと体力を著しく消耗します。ですので今日明日の夕方程まではその話し合いなり準備に時間をかけ、それからイオン様に封印を解いていただいて残り一日は療養していただく形を取っていただきたいと思っています」
「・・・つまり使える時間は明日の夕方までということですか」
「はい。アルビオールの中で休憩すればいいのではと言ってもやはり座席に座るだけでは体力を回復させるには不十分ですし、我々としても使える時間はそれ以上は望ましくないと見ています。ですのでこれが妥当な時間配分だと見ています」
「・・・確かにそちらは急がねばならぬ身でしょうから、それ以上の時間は使えないということですか・・・分かりました。こちらもそういうことで調整致しましょう」
「助かります」
更にそこで使える時間についての注文を口にしていくジェイドにトリトハイムは苦い表情を崩せないままに了承するしかなく、その様子にジェイドは軽く頭を下げた。
「では私は早速他の詠師達も呼んで用意に取り掛かりたいと思います。着いたばかりで申し訳ありませんが、事実の共有及びその為の時間は出来る限り有用に使いたいので皆様はこちらでお待ちください」
「待て・・・俺もそちらに付いていく。用件としてはヴァン達は最早ダアトに戻ってくる事はないだろうし手勢ももう引き上げているだろうが、奴らが残しているものがないかを探しておきたい。特にこの場にいないティアは反発するだろうが、ヴァンを排除するための証拠をな」
「あぁ・・・確かに謡将の兵達は軒並みダアトから許可なく出ていきましたから、その辺りの証拠は欲しいですね・・・」
「まぁ一応というくらいだ。過度な期待はしないでくれ」
そうしてトリトハイムが出ようか・・・といったように切り出した時にアッシュが自分も行くと切り出し、その中身に納得したところでアッシュはルーク達に顔を向ける。
「というわけだから、お前達はここで待機していてくれ。ヴァンとその手勢がいないことから特に危険は無いだろうが、俺くらいしか奴らの懐の内を知るものはいないから誰かが付いてきても妙な形で迷いかねんし導師にサポートは必要だろうからな」
「分かりました。ではよろしくお願いします、アッシュ」
それで自分一人で行くと理由も添えるアッシュに、イオンは快諾したといったように笑顔で頷いた。危険がないならということで。



















・・・そうしてトリトハイムとアッシュが部屋から出ていってしばらくした後、トリトハイム一人が他の詠師を伴い導師の私室を訪れてきた為にこれまでの経緯の説明を行った。

その際に詠師達は衝撃を受けたといった様子を隠すことも出来なかったが、トリトハイム同様に話を嘘だと断じるようなことは無かった・・・この辺りはやはり預言大事の姿勢がモースが異常だっただけで、他の詠師達はそこまでではなかったのが大きかったと言える。

それで詠師達にも話を受け入れてもらったところでルーク達は今後のダアトについてを決めることより、まずは先にとヴァン達についてどうするかという話をしていき・・・結論として万が一にでも捕らえるだけだとか説得して降ったといった事態になったとしても、もうヴァン達を始めとした者達は神託の盾としての役職は剥奪は先に済ませておくということになった。ついでに言うならティアにもその処置に加えて、それらに関して秘密にする形でである。

これはイオンは難しい顔を浮かべたが、後々の事を考えれば当然の処置と言えた。何せ計画についてを聞いただけでもかなり壮大でいて、人類の存亡に関わるような事を企てているのが分かるのだ。なのにそれを知って尚兄を庇おうとするだろう上で、自身も含めて罪など無いだろうと言わんばかりのティアをヴァン達含めて見逃せる筈など無いというのがイオン以外の詠師達の総意だ。

故にヴァン達に関してもそうだがティアに関しても最早神託の盾として扱わないということになり、もしダアトにティアが戻ってきて不満を言おうにしてもそもそももう神託の盾ですらないようにして処罰するようにした方がいい・・・という話になったのだ。最早グランツ兄妹に関して神託の盾に所属させ続けるだけでも害になりかねないという事から。









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