砂上の楼閣の終わり

「・・・今言われたことも忘れたのか?そなたは付いていきたいから付いていったというだけであって、こちらの許可を取らずに動いてきたが・・・なら許可を取ればいいではないかと安易に言ったのは、結局それは反省をしていないのと同義の行動だ。そんな浅はかでいて自分の気持ちばかりを優先した言葉を聞いてこちらが許可を出すと思ったのか・・・」
「お、お父様・・・な、何故そんなに力のない声を出しているのですか・・・?」
「・・・率直に言って、ここまで来てもまだそなたがそんなことを言うのかと思ったからだ・・・今まで散々そちらの者達から言われたであろう。そなたの行動についてを・・・そして今もまたそなたは感情の赴くままに同じような事を言い出そうとした・・・正直、ここまでそなたが勢い任せな発言を続けるとは思わなかったぞナタリアよ・・・」
「っ・・・!」
・・・続いた言葉は心底からの失望のこもった力のない物であり、そう聞かされたナタリアの顔は今までにない愕然とした物と変わってしまった。インゴベルトからそんな言葉と想いを向けられた事などナタリアの経験には一切無かった為に。
「・・・もうよい。ナタリア、今からクリムゾンに外に待機している兵を呼んでもらうからその兵に案内される形で退出せよ。そなたはもうここで離れよ」
「お、お父様・・・」
「それでもそちらにまだ付いていきたいと申すか?それともこちらの言い分に納得出来ないからと不満だからとまた同じように抜け出すか?・・・そうするならしても構わぬぞ。そうした場合はアッシュ達が連れていくかいかぬかのどちらかに関わらず、そなたを王女の座から降ろすことは確定させてもらう」
「なっ・・・!?」
だがそこで手をどけ決心を固めたといった表情を見せたインゴベルトからの言葉に、今度はハッキリとナタリアは顔色を青くして絶句した。予防線を張られたこととその予防線を無視した行動を取れば、完全に王女としての立場が終わってしまうということに。
「・・・いいんですか、叔父上?そこまで言ってしまって」
「・・・わしとて心苦しいと思わぬわけではない。だがそれでも今までのナタリアがやってきたことに関しては最大限助けを出せる範囲で済ませられる処置を先程は口にしたが、それでも尚と口にするようであれば流石にもうわしとて擁護は出来ぬどころではない・・・王の命令に一度ならず二度も背いて私心を優先したとなれば、最早首を落とされても仕方のないことになる上に、その処置を取れぬならわしに向けられる目という物も変わってくる・・・いかに王女殿下で愛する娘という立場にあるとは言え、だからこそ王族として王が裁くことが出来ないのかというように見られる形でな・・・」
「っ!・・・そ、そんな・・・」
ルークはその発言にたまらず確認を向けるが、インゴベルトが王として苦渋の決断をせねばならないと返したことにナタリアは瞬時に涙を溢れさせてしまった。インゴベルトがそこまで言わなければならないし、処置を取らないといけないということを自身がしてしまったことに。
「・・・今の話を聞いたなら理解されたことでしょう、殿下。これ以上勝手な行動を取れば、殿下は殿下としての立場を完全に失うこととなります。そしてその時に不満だからと抗議を起こそうとしても王に二度も私心から独断で逆らう形で行動したこと及び、それこそ最悪の形として・・・預言保守派がやったことではあるとは言え、すり替えられた偽物の王女だからなどといった文言で処刑されることも有り得ないとは言えません」
「!!」
「そのような事態にしたくないのでしたらここで引かれる事が最上の選択になりますが・・・それでもまだと食い下がられますか?」
「・・・いえ・・・もう、言うことに・・・従います・・・」
そしてだめ押しとばかりにジェイドがもしもの事を口にしてからどうするかを問い掛けると、衝撃を受けたナタリアは力なく涙を流しながらうなだれて従うと返すしか出来なくなっていた・・・これ以上動けばそれこそ本当にどうにもならない状況になりかねないと、ようやく理解する形で・・・









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