「導師からして気持ち良くない事であるのは理解は出来るが、こちらとしてはヴァンの動きを制御出来るならその為の手段として妹を使えるなら使えないかと考えてです。導師ならヴァンの腕前を考えれば簡単に倒すも捕縛も出来ないのは想像はつかれるのではないか？」
「・・・だからティアを人質にという形で、ヴァンに降伏を持ちかけられないか・・・ということですか・・・」
「残念ながらそのような事をしてもヴァンは揺るぎはしないでしょう。むしろこちらの危険性が増えるばかりです」
「・・・揺るがないのはまだしも、危険性が増えるだと・・・？」
公爵はすぐにどういうことかをイオンに説明するが、アッシュからの否定の言葉に眉を寄せる。
「単純な話としてヴァンは確かにティアの命を惜しみはするでしょうが、それでティアの命一つで計画の全てを破棄するような事など選びはしないでしょう。むしろその時に敵を減らすためにもとティアもろとも切り払われる事になりかねませんし、よしんばそれを避けられたとしてもティアがあちらに完全に寝返るのは目に見えています。もうこちらに手を貸す理由はない、なら唯一信頼出来る兄の方について勝てば問題ないとです」
「・・・危険性が高いとはそういうことか・・・」
「そうなりますが、今までのティアについての問題行動は態度が目に余る・・・と言うだけでは到底足りませんが、それでもこちらへの敵意に敵対の姿勢はハッキリとは見せてはいません。そして彼女は何としてでもヴァンとの対峙の際には我々に食い下がってくるでしょう・・・今までの経緯から様々に取ってきた問題の行動を罪状として挙げて獄に繋ぐことも出来ない訳ではないでしょうが、導師の気持ちも踏まえた上で彼女を処断するには難しい物がある上で繋ぐ獄のある場所・・・今ならグランコクマですが、そのグランコクマで譜歌をファブレの屋敷で歌ったように強行手段を用いて脱走するなどして、ピオニー陛下に害をもたらすようなことがあれば問題という規模では収まらなくなるでしょう」
「・・・だからそちらとしてはヴァンの妹を奴との対峙に備えて連れていくのが比較してまだよいと見て、動くということか・・・」
「はい。その上で当人には言うつもりはありませんが、もしヴァンに寝返るような事があればヴァン共々仕留める事も視野に入れています。そしてそうなった際に命乞いをしてきたとしても、聞くつもりはありません・・・ヴァンが死んだとなればティアは始めの内は失意の内に沈み自身の命が助かったことに安堵するだけに留まるかもしれませんが、時間が経てば経つほどに兄を殺した我々への殺意を芽生えさせてくるのは目に見えています」
「っ・・・！」
そうしていかにアッシュがティアに対して考えているのかを公爵と話をする中で明らかにしていくのだが、ハッキリともしもの場合についてを殺すと言い切ったことにイオンは悲痛な表情を浮かべて唇を噛んだ・・・そんなことをしないで済ませられるかという気持ちがあるのもそうだが、今までの旅でのティアの印象として有り得ないことだと否定を返せない気持ちとの板挟みにあっているのだろう。
「・・・分かった。そちらがそこまで考えているのであれば、この話はここまでにして話を元に戻そう」
それで公爵はそんなイオンを見てか見ずかはともかく、それでいいとして話題を戻そうと流れを変えることを口にする。









.