始まりの時と見定める境界

(・・・とりあえず行くか。こうして黙って動かずにいても、何にもならないしな・・・)
(『そうだな・・・』)
そんな会話からルークは何処と無く疲れたような声を上げ、『ルーク』も同意する。これ以上色々と考えるのは精神的にキツい物があるというのを誤魔化すように。






・・・それでルークが中庭に来た時に前のようにヴァンとガイが何かを話し合っていたのだが・・・
(今なら分かるけど、単に仲がいいって距離感でも空気感でもないな・・・あれは・・・)
(『つーか明らかに俺よっか距離がちけぇって言いたくなるくらいの距離感だっつーの』)
その光景を遠目に見て、ルーク達はあれが少し仲のいい程度の物ではないと改まって感じていた。
「おぉ、ルーク様・・・」
(『・・・それで、ペールが俺に気付いたように見せかけて二人に俺が来たって伝えたって訳か』)
(ペールの名前は挙がらなかったから敵にならなかったのか、それとも師匠達のサポートに回ったのかはともかくとしても・・・)
(『ガイとセットなのかどうかはちょっと微妙じゃあるけど、ペール一人じゃ何もないだろうから取りあえずは保留だな』)
(そうだな・・・)
そんな光景を見ていたルークに気付いたペールの声に反応した二人を尻目に、内心でルーク達はペールについてどうするべきかを決めれずに結論を後回しにする。ペールの危険性について、どちらもどうとも言えないと感じたが為に。




















・・・それでルークに一礼をした後にさっさと場を離れていくガイを見送った後、ヴァンとの稽古を始めるのだが・・・
(明らかにやる気ねぇ・・・)
先程に会った時のよう、そして以前にあった人形を用いての模擬戦すらさせずにただ黙々と剣を振り続けさせるだけで特にアドバイスもない・・・この状況には流石にルークもやる気がないとゲンナリするしかなかった。
(『だろ?つーか俺が一人で剣術訓練してなかったら、オッサンが預言覆した後に世界が滅ぶって展開になってたんじゃねーか?』)
(あ~、結構大袈裟じゃなくそんな感じはあるかも・・・旅をして敵と戦ったりするのが技量を高めるのに手っ取り早いってのは確かではあるけど、だからって力任せに剣を振っていけば勝てるなんて甘くもないしな・・・)
『ルーク』がそんな有り様に自分の努力があってこそ引き分けまでいけたんじゃないかと言うと、ルークもあながち間違いではないのではないかと漏らす。






・・・ルーク自身の才覚も大きいと言えば大きいが、そもそも剣術に限らず武術は日々の積み重ねが物を言うのだ。いきなり奥義を使えと言われても基本の技すら身に付いてない状態では、余程の才覚がなければそんなことなど出来るはずがない。

その点でヴァンからほぼ形だけの稽古しか受けていなかった『ルーク』だったが、屋敷内でやることのない『ルーク』は自分で勉強をするか剣術の稽古をするしかなかった。その為に『ルーク』の肉体は全く何もしてない時どころか、むしろルークがティアと旅を始める時より多少強いと言ったレベルになっていた。

後々に始めより劇的に強くなることから考えれば微細な差かもしれないが、それでも『ルーク』の言ったように全く剣術の訓練をしていなかったならヴァン達に太刀打ち出来るようなレベルではなかったかもしれない・・・そうルークは確かに感じていた。









.
6/19ページ
スキ