焔の存在を幻想にさせぬ為に

「・・・そういうお前はどうなんだ?元帥としての地位を退くには年齢としては別におかしくはないのだろうが、もうマルクトに未練は無くなったのか?」
「未練はありませんよ。私も軍を辞めるまで色々と奔走してきましたし、もうピオニー陛下も元陛下という立場で落ち着きました。もう私としてはマルクトへの義理は果たしましたし・・・いい加減ガイと顔を合わせる事にうんざりしていましたから」
「ガイ、か・・・」
そんなジェイドに今度は自分からと話を振るアッシュに、微笑と共にガイへの良くない気持ちを匂わせる返しをする。
「ルークの事を忘れられないといった気持ちが今まで全く無かったなんて事はありませんでした。ですが貴方があの時にあぁしてエルドラントから大爆発により戻ってこれた奇跡を考えれば、また二人になど戻すことなんて都合のがよくそれ以上の奇跡など起こしようがない・・・そう思ったからこそ私は貴方に『ルーク』という名を再び掲げるようにと言い、各国の上層部にもそうしてほしいと進言させていただきました」
「その件に関しては感謝している・・・あの時にあぁ言ってくれなければ未だにとは言わずとも、俺の事で色々と問題が起きていただろうからな」
「えぇ。そして私自身もこう言った他の面々がいない場でくらいしかルークの事を話すことがないようにしていましたが、彼も一応はそうはしてくれました。ですが、ルークの事に関しての話を私にしに来る頻度があまりにも酷かったんですよ・・・」
「・・・おそらくだがルークに未だに強い気持ちがあるという意味では、ティアよりガイの方が上だろうな。ティアには長い間会っていないから分からんが、お前の感じから恐らくな」
ジェイドはそこから自分と過去の語りと共にガイの行動がいかにしつこいかを滲ませつつ話し、アッシュもまたティアより酷いだろうと漏らす。
「私もそう思いますが、彼がしつこいのには変わりはありませんでしたからね・・・ですから軍人を辞めてケテルブルクに戻ってからの生活は基本的に快適です。時々愚痴りにくることは玉に瑕ではありますが、それでもガイと頻繁に顔を会わせないで済むのは何物にも代えがたいですからね」
「前にも言ったが、カーティス家がケテルブルクでの隠居生活を受け入れてくれたのが信じられんな」
「一応は養子としての務めは果たしましたからね。私の跡継ぎを作ることも含めて。それにこの通りもう私も十分に老人と言える年齢ですし、老骨に鞭を打たせてまでマルクトに人がいないような事もありませんよ」
「まぁそれもそうか。現在の情勢を考えれば人が足りんなどと言うこともないしな」
そんなガイを避けるための生活をしているという話をするジェイドの穏やかな語り口に、アッシュも分かっていたとばかりに返す。以前のアッシュならジェイド相手に軽口に冗談もそうだが、笑顔など見せなかったのにだ。
「まぁそれはともかくとして、ティアもそうですがアニスにも貴方は会っていないのですか?今の口ぶりからして」
「あぁ、そうだが・・・お前は会ったのか?」
「いいえ、私も会っていません。まぁアニスはともかく、ティアはガイ同様ルークへの想いがあるからでしょうがね」
「・・・そう言われると俺としてはと言うより、俺の中のルークの記憶からあまりいい気はしないんだがな・・・」
次にジェイドは残りのメンバーである二人の存在についてを話題にするのだが、アッシュは何とも言いがたそうな表情を浮かべた。ティアのルークへの想いについてを耳にして。









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