人の皮を被った獣などいくらでもいる

「・・・まぁ気持ちは分からないとは言わねーよ。あんな奴でも命は命だって思う気持ちはな・・・ただあの手が出てこなかったら俺達は殺されるなんて展開になってたかもしれないし、それ以降は預言通りになるようにだとかオッサンらとのいざこざでどれだけ血が流れてたかなんて想像はつかねーのもそうだけど・・・何より取り返しのつかない事態になったところでモースは自分のせいじゃないだとかっつって、預言はまた別にあるんだって責任逃れをして最後まで誰かを犠牲にしてっただろ。だからこんな言い方はお前としちゃ気に入らないだろうけど、あいつが生きていて死ななかった人が大勢いたからまだいい・・・って思うんだ」
「・・・言いたいことは分かります、けど・・・」
「それでも感情じゃ理解は出来ないってのは分かる・・・だからお前はそれでいいよ」
「え・・・?」
そんなイオンに声とこうするようにとルークは話し掛けるのだがやはりすぐにはといった様子を見せるのだが、それでいいとの答えに却ってイオンは戸惑った。理解しろといったように言いつつも、それでいいとの答えに。
「別にお前に全部今言ったような事を心から納得してもらう必要はねーと思うんだよ。むしろそういった考え方ってのは持ってるのが望ましいって思うんだよ・・・じゃなきゃ人は獣であることの方がいいって言ってるようなもんだって事だからな」
「獣・・・?」
「こうやって俺達は話や意思疎通は普通に出来るし、滅茶苦茶仲がいいかってのは他の奴らのことも含めてともかく交流も出来てる。でもこうして旅をしてきて野盗だとかだったりも含めて、誰かを殺さなきゃ事態が解決しねー事の中に俺達はいる・・・旅をし出して初めてそういった事と向き合うことになった俺が言うのもなんだけど、必要だからって割り切るかどうかはまだそうしなきゃいけないって考えることが出来る心があるからやれることだ。けど割り切るかどうかじゃなく必要だからで迷うことなくもそうだし、何よりそんなことなんかその時の気分次第でどうでもいいとかって動けるのはいくら否定しようとしても・・・人らしさに人であることを捨てたようなもんになるんじゃないかって思うんだよ」
「っ!・・・それを肯定してしまえば、人より獣であると貴方は思ったということですか・・・そしてそういったことを出来たのが、モースだと貴方は言いたいんですね・・・」
「あぁ、そうだ」
・・・そうしてルークが口にしていった獣か人かという考え方についてに、イオンが重々しく理解したといった言葉に頷いた。モースが獣という考えを持ったことに。






・・・このルークの考え方は幻想郷で暮らしていって身に付いた物である。ルークは人に妖に神と雑多に種族が存在する上で、実力がある者にない者の価値観やら考え方の差が激しいということを幻想郷で暮らす内に見知ってきた。

その差として言うならモースを食い殺したような低級の妖怪達のような者達もそうだが、人を食う必要などないが特定の強い考えを持つ低級の妖怪などいくら束になっても歯牙にかかない相当に強い妖怪もいるのを知っているが・・・ルークからしてその筆頭に上がるのは太陽の畑という場所で暮らす花妖怪だ。

住んでいる場所の位置も遠い上に関わらなければならない理由もない為にそう会話したこともないルークだが、その姿もそうだが話す会話の中身も逆鱗に触れることさえしなければ本当に妖怪かと思うような可憐でいて理知的な存在だと自身では思っている。話に聞いたような逆鱗に触れさえしなければ、そして著しく機嫌を損ねているような時でなければだ。

ただちゃんと妖怪は危険だとも人とはかけ離れた存在だともルークはちゃんと認識してはいる・・・しかしそれでも自身のルールを守り、深く何も考えることなくただ理不尽に力を振る舞うことのない存在と一線を画するそういった存在達を単なる獣と同類にしてもいいとは思ってはいなかった。そして獣というにはあまりにも強大すぎる存在ではあるが、そんな彼女達・・・いや、自身も含めて獣となる瞬間があるのだからこそそのような平常の時があるのだと。









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