人の皮を被った獣などいくらでもいる

『ではモースに関してはアッシュには折りを見て話をしてください。私から話をしにいっても良いかと思いますが、貴殿方から話をした方がよろしいでしょうからね』
「分かった。じゃあまた」
そうして紫がもう話は終わると言葉にしたことにルークが返した後、声が聞こえなくなったのを確認した後でジェイドが口を開く。
「・・・取り敢えずアッシュに話をするのは彼に会ってからにするにして、紫が言っていたモースに求める役割とは何かが気になるのですが・・・」
「それか・・・まぁ予想はつくよ・・・モースは確実に死ぬことになる・・・妖怪の餌って役割を担わされる形でな」
「っ、餌・・・!?」
そこで早速と紫の言葉についてを問い掛けるのだが、複雑さを滲ませながら餌と口にしたルークにらしくなく驚きを浮かばせた。ルークから出るにはあまりにも物騒な言葉だったのもあり。
「そういった反応になる理由は分かるけど、紫がそうするのは幻想郷のシステムみたいなとこに関わる部分があるからなんだよ」
「システム?」
「前に言ったろ?幻想郷は神もいるし人もいるし妖怪もいるって。そして忘れ去られた者達の楽園って風な部分が結構大きいんだけど・・・紫とか結構力のある妖怪はそんなに必要じゃないみたいな話は聞いたことはあるけど、多数の妖怪にとって必要なのは人間の肉体をそのままの意味として食料にするのもだけど・・・妖怪を妖怪として畏れる心が妖怪には必要なんだ」
「畏れる心・・・?」
ルークはその様子を見て幻想郷に加えて妖怪についてを説明するが、ジェイドはどういうことかとそれだけでは分からないと眉を寄せる。
「妖怪っていうのは肉体はあるっちゃあるけど、精神に存在が左右されるらしいんだ。妖怪がいるって信じられれば存在があるって思われて力になって、妖怪が恐ろしい物だって思われればより力になるし、妖怪に殺されるって心の底から感じたなら・・・って感じに妖怪に対する気持ちが強ければ強いほどに、存在だったり力が増すって形でな」
「・・・だから妖怪は人間を餌として食べるというわけですか。人を襲い食らえばそれだけ畏れが得られ、様々な恩恵を得られるからと」
「そうだけど、だからって幻想郷にいる人間を生け贄のような形でだったりで妖怪の餌に差し出すなんてことは、幻想郷で普通の人が安心して住める場所が人里って言う場所しかないことから、そんなことをしたら下手をすると人間対妖怪みたいな構図になったりして幻想郷のあり方そのものが崩れかねない・・・だから人里の人間が不用意に人里から抜け出して死んだならもう仕方ないって割り切るしかないけど、そんなことばかり起きたら人が人里から全く出ないなんて事になるし妖怪も人里を襲うなら即刻退治されるっていうルールがあるから食料を得られないってことになる。それで紫は幻想郷の外から妖怪の餌となる人間を密かに連れて帰ってるって聞いたことがあるんだ。一応生きる気力を失った人だとか極悪人だとか、いなくなっても問題ない人間を見付けてって形でな」
「成程・・・その話に当て嵌めればモースはいなくなった方がいい極悪人になりますね。そして条件にピタリと来たから、彼女はモースを連れていくために我々に話を持ちかけたということですか」
「だと思うよ。加えて言うなら妖怪もピンからキリまでいて、紫みたいに力が滅茶苦茶あるのもいれば獣に毛が生えた程度くらいの実力の低級な妖怪もいて、そういった妖怪の大半は人間の畏れを好む傾向にある・・・だからそんな低級な妖怪にろくに戦えない人間を与えることで、人里を襲わないってルールを守る幻想郷の一員に対しての情けを向けてる面もあるんだ」
「確かにモースは元のままでは全く戦えないでしょうから、そういった意味でも餌に最適だと言うことですか・・・目的が合致した上でモースにはいなくなってもらった方がいいので止めるつもりはありませんが、異形の怪物達に生きたまま食われていくのだと想像すると流石にその死に方には同情は致しますよ」
「・・・辛い死に方だとは思うけど、うまく色々と止めなきゃいけないって事を考えるとな・・・」
そうして幻想郷においてに妖怪についてに紫にいかな思惑があるのか・・・それらを語られジェイドは納得したと共に同情だけはすると口にし、ルークも苦い表情を浮かべながらも頷き返す。モースと対峙した時が今口にしたような事が起きる時になると、二人共に理解しながら・・・









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