人の皮を被った獣などいくらでもいる
「い、一体何が起きたというのだ・・・モースはどこに消えたと言うのだ・・・?」
「・・・どこにと申されてもあの手と声の主にどことも知れぬ場に引きずり込まれたとしか、こちらにも分かりません・・・そしてあの声の言う通りであれば、大詠師はもうこちらに戻ってくることは無いのでしょう。あの声の主からすれば、大詠師に預言の実行の為に動かれては都合が良くないといった響きを滲ませていましたからね」
「確かにそれは私も感じはしたが・・・あんなことが出来るような存在になど心当たりがないがローレライよ・・・他の意識集合体のやったことかだとか、モースを引きずり込んだ存在に心当たりは無いのか?」
『いや、ない。我もあのような存在など見たことも聞いたこともない・・・そしてあの手が出てきた異空間は何らかの音素を用いて開かれたような様子もなかった。正しく怪異の存在と呼んでも差し支えのない物だろう』
「そう、なのか・・・」
そんな中で動揺しながらも何とか状況を把握したいと言葉を発する公爵だが、ジェイドにローレライから返ってきた分からないといった旨の返しを複雑そうに受け止めるしかなかった。結局正体が何なのか分からないことに。
「・・・えっと、確かにあの手については気になりますけど・・・もうそこについてを深く掘り下げたい気持ちは分かりますけど、そうしない方がいいと思うから止めておきませんか・・・?」
「何?どういうことだ、ルーク?」
そんな時におずおずとといった様子で手を上げ発言をしたルークに、公爵と周りの視線が集中する。
「色々と謎は多いですけど、あの手を出した女らしい奴は預言を実現させることを諦めない姿勢をモースが見せたから、それを止めるためにあんなことをしたって事でしょう?それは裏を返せばモースがあそこまで預言を実現させようとした意志を止めたいと思ったからで、そうじゃなかったならあんなことをするつもりじゃなかったとも捉える事が出来ませんか?アッシュの言葉に頷いていたなら、そんな行動を取る予定なんて無かったって」
「そ、それは・・・確かにそう捉えられなくもないが・・・」
「だったら父上に叔父上達がどういう気持ちなのかを確認した上で、あの手に関してはもう何も追求しない方がいいと思ったんです。ローレライが言ったように音素を使わない術があったからあんなことが出来たのかも分からないですし、正体を掴めるかどうかも分からない上にあんな風にモースを連れていける・・・だから下手に正体の追求に躍起になるだったり預言の達成が大事だってまだ言うようなら、その誰かをモースと同じように連れていくのも有り得るんじゃないかと思ったんです」
「「っ!?」」
その中でルークはあの手の持ち主についての考察を話していくのだが、追求に捜査や預言の実行に舵を切った場合のもしもを口にするとインゴベルトと公爵は一斉に冷や汗を浮かばせて息を呑んだ。その言葉が意味することはつまり・・・
「・・・確かにあの手の持ち主がその気になれば、いついかなる時でも対象者を襲うことは可能でしょうね。どれだけ警備を増やそうとも四六時中対象の見張りをやらせたとしても、一瞬の時間さえあれば先程の大詠師を拐ったようなこともそうですし首筋を刃でかっ切ってしまうことも出来る。そしてその機会は風呂に入る瞬間であったり、排泄行為をしている時と隙が出来る時間は枚挙に暇がありません・・・暗殺なんて手を取られたならどうあがいた所で、誰にもそれを止めることなど出来ないでしょうね」
「「っ!!」」
・・・そう、暗殺という更なる可能性を恐れたのである。
ジェイドがルークの言い分に納得しながら口にした危険性の羅列に、更に二人は動揺を深めた。それこそ話の通りならどこから現れるか分からない相手にどうにか対処しようにも、そんなことなど出来るはずもないと理解して。
.
「・・・どこにと申されてもあの手と声の主にどことも知れぬ場に引きずり込まれたとしか、こちらにも分かりません・・・そしてあの声の言う通りであれば、大詠師はもうこちらに戻ってくることは無いのでしょう。あの声の主からすれば、大詠師に預言の実行の為に動かれては都合が良くないといった響きを滲ませていましたからね」
「確かにそれは私も感じはしたが・・・あんなことが出来るような存在になど心当たりがないがローレライよ・・・他の意識集合体のやったことかだとか、モースを引きずり込んだ存在に心当たりは無いのか?」
『いや、ない。我もあのような存在など見たことも聞いたこともない・・・そしてあの手が出てきた異空間は何らかの音素を用いて開かれたような様子もなかった。正しく怪異の存在と呼んでも差し支えのない物だろう』
「そう、なのか・・・」
そんな中で動揺しながらも何とか状況を把握したいと言葉を発する公爵だが、ジェイドにローレライから返ってきた分からないといった旨の返しを複雑そうに受け止めるしかなかった。結局正体が何なのか分からないことに。
「・・・えっと、確かにあの手については気になりますけど・・・もうそこについてを深く掘り下げたい気持ちは分かりますけど、そうしない方がいいと思うから止めておきませんか・・・?」
「何?どういうことだ、ルーク?」
そんな時におずおずとといった様子で手を上げ発言をしたルークに、公爵と周りの視線が集中する。
「色々と謎は多いですけど、あの手を出した女らしい奴は預言を実現させることを諦めない姿勢をモースが見せたから、それを止めるためにあんなことをしたって事でしょう?それは裏を返せばモースがあそこまで預言を実現させようとした意志を止めたいと思ったからで、そうじゃなかったならあんなことをするつもりじゃなかったとも捉える事が出来ませんか?アッシュの言葉に頷いていたなら、そんな行動を取る予定なんて無かったって」
「そ、それは・・・確かにそう捉えられなくもないが・・・」
「だったら父上に叔父上達がどういう気持ちなのかを確認した上で、あの手に関してはもう何も追求しない方がいいと思ったんです。ローレライが言ったように音素を使わない術があったからあんなことが出来たのかも分からないですし、正体を掴めるかどうかも分からない上にあんな風にモースを連れていける・・・だから下手に正体の追求に躍起になるだったり預言の達成が大事だってまだ言うようなら、その誰かをモースと同じように連れていくのも有り得るんじゃないかと思ったんです」
「「っ!?」」
その中でルークはあの手の持ち主についての考察を話していくのだが、追求に捜査や預言の実行に舵を切った場合のもしもを口にするとインゴベルトと公爵は一斉に冷や汗を浮かばせて息を呑んだ。その言葉が意味することはつまり・・・
「・・・確かにあの手の持ち主がその気になれば、いついかなる時でも対象者を襲うことは可能でしょうね。どれだけ警備を増やそうとも四六時中対象の見張りをやらせたとしても、一瞬の時間さえあれば先程の大詠師を拐ったようなこともそうですし首筋を刃でかっ切ってしまうことも出来る。そしてその機会は風呂に入る瞬間であったり、排泄行為をしている時と隙が出来る時間は枚挙に暇がありません・・・暗殺なんて手を取られたならどうあがいた所で、誰にもそれを止めることなど出来ないでしょうね」
「「っ!!」」
・・・そう、暗殺という更なる可能性を恐れたのである。
ジェイドがルークの言い分に納得しながら口にした危険性の羅列に、更に二人は動揺を深めた。それこそ話の通りならどこから現れるか分からない相手にどうにか対処しようにも、そんなことなど出来るはずもないと理解して。
.