始まりの時と見定める境界

・・・それでガイについての話も一先ず終わった所で、ルークは公爵の所に向かったのだが・・・






(・・・やっぱり違うな、本当にこっちの師匠・・・実際に会ったのは今日が初めてだけれど、こんなに酷く他人事な感じだってな・・・)
(『と言うか今日も来なくて良かったと思うんだけどな。マジで・・・むしろ自分の仕事があんだからしばらく来れませんみたいに言った方が良かったと思うぞ。少なくとも俺だったらの場合でこっちのオッサンならそうしてくれた方が嬉しかったぞ』)
(ん~・・・それは正直言えるかもな・・・)
・・・以前のように朝の食事の最中にヴァンが訪れていた事を知り、そこからしばらくバチカルに来れないから今日は付き合うと言われ先に庭に向かったのを見送ったルーク。一応その時は言葉遣いと態度は丁寧にこそはしたが、『ルーク』からのアドバイスにより力を入れて弟子らしくしないでいいと言われた為に無気力に振る舞う形でだ。
そんな中でルークは内心で『ルーク』と会話し、何とも言えない声を上げた。むしろあんな姿を見た後では否定を返せないと。






・・・ここでのヴァンと初めて会ったルークだが、ガイと同じように想像以上に自分の知るヴァンと違うその姿に何とも言えない様子になってしまった。いくら先に聞いてはいても、ハッキリ言って自分に対してやる気が無さすぎるその姿に。

親身に構えてくれる様子など一切なく、ただしばらく来れないだろうからファブレに顔を見せると共にルークに稽古をつけに来た・・・そう公爵に向かってヴァンは、ルークに視線などほとんど向けないままに話を進めていった。最低限の義務に義理を果たしに来ただけと言った、事務的な気持ちが嫌でもルークも感じ取る形でだ。

終いに庭に先に行くと言った後に出てきたのは、早く来なければその分の稽古の時間が無くなるというものだったのだが・・・それは即ち、ルークの為に予定以上の時間を使わないと言っているも同義な物だった。

・・・確かに今のルークなら、ヴァンの言い分と言うか立場からそう言ったことを言い出すのは理解は出来る。だがここまで事務的でいて、大して自らに関心などないと言ったような姿を見せられれば・・・いやが上にでもここのヴァンには偽りですらも、自分を弟子だと見る気がないのは明らかであると感じ取れてしまった。それこそ最低限、アッシュを手に入れた後の処理を淡々とこなしているに過ぎないと。






(・・・よくこんな姿を見てきて、父上達は普通に接してこれたな・・・明らかにアッシュとの時と違うと思うんだけど・・・)
(『・・・その辺についちゃ、一度父上に聞いたことはある。屋敷の人間に色々と聞き回るついでにな・・・その時は父上も難しそうな顔をしながら、その事については聞かないでくれって言われたんだ・・・今にしてお前から聞いた事も合わせると、父上も色々と感じてはいるんだろうけど何も言えなかったんだろうなとは思えるんだよ・・・』)
(・・・追求したいだとか色々言いたいことはあるんだろうけれど、その辺りは諸々の事情があって出来ないって考えたんだろうな・・・父上・・・)
(『だろうな・・・』)
それでそんなヴァンの事を放っておいたのかと漏らすルークに、『ルーク』が口にしたいかにも公爵としても不本意であるといった様子を見たとの言葉に二人揃って何とも言い難い気持ちを抱く。理由は多々あれど、その理由から深くヴァンに追求出来ない事が公爵にとっても気持ちよくないのだと理解して。









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