人の皮を被った獣などいくらでもいる

「預言を捨てろだと!?何を馬鹿なことを!百歩譲ってヴァンが見たという譜石の預言は今の話に出てきたものでいいだろう!だがそんなものは本来の預言などではない!そこの光共々ローレライや第七譜石の偽物だ!そしてそんな貴様らの用意した偽物についてなど信じられる筈もない!」
「・・・ならばヴァン達の事はどうされるつもりでしょうか?今百歩譲ってと申し上げられましたが、ヴァン達が預言をそのようなものだと認識して貴方も騙す形で動いているということは認識された筈ですが・・・」
「フン、そんなことなど大した問題ではない!確かにヴァン達は反旗を翻しておるのかもしれんが、そんなものはどうとでもなる!後で私が片付ければいい・・・貴様らを捕らえ処刑した後でな!」
「「「「っ・・・!」」」」
そしてモースは怒りのままにそんなことなど信じぬし、どうとでも出来るとアッシュの追求にも淀みなく答えていくが・・・捕縛といった言葉が出てきた事に、一斉に場の面々に緊迫した空気が流れて身構える体勢に入った。
「・・・捕らえる、ですか。お忘れですか?大人しく私が捕らえられるような者かどうかについてを」
「確かに貴様のやりかねん事は驚異にはならんとは言えんだろう・・・しかしいかな秘策を用いようとした所で多数の兵に囲ませて捕まえさせれば何の問題もない!何人かは死ぬだろうが貴様らを捕らえるか殺しさえすればそんな犠牲など何の問題でもない!」
「・・・おい、イオン。もういいだろ。このまんまじゃどうせじり貧だ。なら導師として前に言ったようなことを宣言してくれ。せめてそれくらいは頼む。じゃねーと俺達は犬死にになる」
「はっ、はい・・・モース、貴方が尚もそう言われるのでしたら貴方を導師の権限を持ってその権限を剥奪します」
「ハハハ!何を言われる導師!貴方の言葉など何の権限もない!実質的にダアトのトップの私からすれば貴方の言葉など何の意味もないのですよ!」
「うっ・・・」
それでジェイドにルークにイオンと続々とモースに向けた言葉を口にして行くのだが、全くと言っていいように勢いの衰えないその返しに毅然とした様子を浮かべた筈のイオンはたまらずに言葉を詰まらせる・・・実際にイオンの持つ権限はほぼないに等しいのは事実のために。
「さぁ陛下!もうこやつらと話すことなどありません!兵をこの場にお集めください!」
「う・・・むぅ・・・」
そんな様子を見てか早速と捕縛に場を進ませようとするモースに、インゴベルトは何とも言いがたそうな声を漏らす・・・公爵から話をされたことから今の状態としてルーク達寄りに考えはなっているが、事前の約束から表立って味方出来ないという葛藤を滲ませ。



「残念ながら、そこまでですわ大詠師」



「っ!?がぁっ・・・!?」
「「「「っ!?」」」」
・・・そうして次の瞬間に一触即発の事態になるかと思われた時、突如として場に響いた女の声とモースの背後に異空間が開き・・・か細く力など到底あるとは思えない白い手袋をまとった手がモースの首を掴み、宙に持ち上げ出した事に周りも含めて驚愕の目を向けざるを得なかった。いきなりの異様な光景に。
「大変貴方の意志が強いことは立派だと思いましたわ、大詠師。預言の中身が永遠の繁栄を詠んだものと信じて疑わぬ意志は・・・ですが貴方がこれ以上その意志を曲げないまま活動することは望まれることではありません。ですので連れていかせていただきますわ・・・二度とここに戻ってこれない場所へとね」
「ぐぁぁぁっ!?」
「なっ・・・き、消えた・・・モースが手に引きずり込まれるよう、妙な空間の中へ・・・」
だが声の主はそんな状況に構わず話を続けたのだが言いたいことを言い終わったといったタイミングで手はモースを異空間に引きずり込み、その姿が見えなくなった所で異空間が消えた事にインゴベルトは呆然としたような声を漏らすしかなかった。いきなりの超常現象と、モースがそれに巻き込まれてしまったことを受け入れざるを得なかったために。









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