人の皮を被った獣などいくらでもいる

「・・・そしてそういったヴァンが見た第七譜石の中身は正しいと、そちらは言うというわけか」
「っ!お、お待ちください陛下!今言われたことを信じるなどとしてはいけません!この光は自らをローレライだと言って妄言を言葉にしているだけで、それが本当だなどと決まった訳ではありません!全て嘘です!」
そんな時にインゴベルトも事実を受け止めるように重く言葉を漏らすのだが、モースは必死に嘘だと叫びたてる。そんな中身など信じたくないし、受け入れたくないと言わんばかりに。
「・・・ならばそこにいるルークとアッシュの存在はどう説明する?ヴァンの行動は全くの嘘ではないというのはそこの二人が証明しておるぞ」
「っ!・・・そ、それは・・・」
だがインゴベルトから返ってきた疑問の問い掛けと視線に、すぐさまモースは気まずげに目を反らす・・・起きた事実を信じない、誤魔化すにはれっきとした証拠がそこにあると突き付けられ。
「・・・そなたが今言われたような第七譜石の預言の中身についてを否定したいという気持ちは分かる。しかし起きてしまった事実もそうだが、何を持って行動しているのかという動機に関してまで信じたくないからと否定するだけしてもその事実は変わりはしない。なのにそこを否定してなんになる?起きてしまった事は否定は出来ぬどころか、ヴァンのやったことまでもを有り得ない嘘と言ってしまいそうだと認識したとして・・・そのままそうしてしまえばヴァンの行動を許してしまう事になるのだぞ」
「っ・・・で、ですが奴らは私の言うことなら聞いて・・・」
「言うことを聞くだけ聞いていると見せ、その実は自らの思う展開の為に裏で行動している・・・と言うのはよくあることだ。ただそもそもを言うならフォミクリー技術に関して自分は何も知らぬ存ぜぬでは済まされんぞ、大詠師・・・そちらも俺の事に関してはともかくとしても、フォミクリー技術に関して一枚噛んでいることは俺は知っている」
「なっ・・・!?」
「っ・・・!」
インゴベルトはそのままヴァンについてを言及していきモースは自分ならどうにかなると言おうとしたが、アッシュが口を挟んできてまさかの事実・・・フォミクリー技術の事を知っていると言い出したことにモースが愕然とした表情を向け、そっとイオンは苦痛に耐えるような表情と共に拳を握り締めていた。
「・・・それは、どういうことだアッシュよ?」
「全てを話すと長くなりますのである程度かいつまんで話をしますが、とある時にヴァンは大詠師が困っている姿を見て投げ掛けたのです。フォミクリー技術を用いれば今の状況を打破出来ると。そうしてその説明を受けた大詠師はフォミクリー技術を用いることを選択したのです。勿論公にはフォミクリー技術があることなど話をすることなく、その結果を受け止めて何事もないと表向きに見せながら動く形でです」
「っ!」
「・・・成程。今の反応から見て決して大袈裟でも嘘の反応でもない、と言うことか」
インゴベルトが先を促すように声を向けるとイオンの事を言わないようにしつつフォミクリー技術についての関与を口にしたアッシュに、モースがたまらずビクリと体を揺らした姿に事実だとインゴベルトも感じ取る。
「・・・そこについてを深く掘り下げる事は致しません。今重要なのは大詠師もまたヴァンの手を利用した上で、大詠師もまたヴァンに利用されていたと言うことであり・・・我々として言いたいこととしては、大詠師に考え方を変えて我々に協力していただきたいと叔父上達にも進言をしに来たと言うことです」
「何・・・っ!?」
そうしてアッシュがこれが本題だというように話を切り出すと、モースは意外だという驚きを浮かばせた。そんなことを切り出されると思っていなかったと。









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