人の皮を被った獣などいくらでもいる

「・・・失礼します。ただいま戻りました」
「なっ・・・き、貴様らは・・・!?」
・・・そうして謁見の間に入って堂々としたルーク達の声と姿を受け、インゴベルトや公爵達の脇に控えていたモースは絶句といった様子を見せた。
「おやおや、驚かれているようですね大詠師。まぁそうでしょう・・・貴方の中では私達がこのようにバチカルに戻ってくることなど想像もしていなかったようですからね」
「な、何を・・・!」
「まぁ色々と言いたいことがあるかもしれませんが、まずはこちらの話を聞いてください。その為に陛下も我々を何もせずに迎え入れたのでしょうからね」
「陛下・・・!?」
ジェイドはそんな反応に挑発めいた口調を向ける中でインゴベルトに迎えられたと口にすると、動揺のままにモースが視線を向けると疲れたように手を額に当てるインゴベルトの姿があった。
「・・・門番の兵士から報告を受けた際にそなたにルーク達が戻ってきたと話をすれば、ここに呼ぶより捕縛しろと言いかねんと考えたからだ。そうしてしまえば捕縛した後に我々の求める情報が手に入るかどうかもそうだが、そもそもとしてそこにいるカーティス大佐が何の手も講じずここに来ているとは思えないからこそこうさせてもらった」
「・・・何の手も講じてないとは思えない、ですか。まぁ問答無用で捕縛にかかられたなら、私も何もしなかったとは言えませんね」
「っ・・・!」
そんなインゴベルトが口にした言葉の中で手を講じるとの発言にジェイドが意味深に眼鏡に手を当て微笑を浮かべる様子に、モースは大袈裟ではないのではというように予感したという戦慄の様子を浮かべた。もしもの場合本当にここで何か・・・最悪、自分も巻き込まれて死にかねないような手を打ってくるのではないかと感じて。
「まぁ取りあえずはこちらの話を聞いていただけませんか?こちらとしては単純に話し合いをしたいと思ってこちらに来た次第であり、戦いたいと思っているわけではありません。ですが話など聞く気もないと我々を排除にかかるというのであれば・・・後悔する暇など無いことになるかもしれませんがね」
「きっ、貴様・・・我々を脅すつもりか!?」
「止めよ、モース・・・話し合いに来たのが目的だというなら話を聞こう」
「なっ、陛下!?」
ジェイドはそんな話の流れを汲んだまま話をしに来たと告げモースが敵対心を強まらせる中、インゴベルトが話を聞くと手をどけ意を決したように口にしたことに信じられないというように顔を向けた。
「落ち着くのだモースよ。そもそも分かっているのか?・・・こうしてルーク達が我々の前に来たということはすなわち、ヴァンは我々に虚偽の報告をしたのだということを」
「っ!・・・そ、それは・・・」
「その理由について何なのかに関してを考えるのは悪いとは言わん。だがこうして我々の前にルーク達が戻ってきたからには何があったのかを聞いて、それがどういった中身かを確認してからでも遅くはないだろう・・・向こうが話し合いに来たというなら、それくらいは聞けばそちらは話してくれるであろう?」
「勿論」
「っ・・・!」
だがインゴベルトが落ち着き払ったように冷静に話を進めていくばかりかジェイドが頷いて返したことに、モースはたまらず歯を噛み締めた・・・モースとしては是が非でも今すぐに事を進めたい気持ちはあるが、インゴベルトが言ったことに表立って歯向かう事をするつもりがないのもある上で言われた通りにヴァンに嘘をつかれたと気付いて思い至り、冷静な部分は気に食わないながらも話を聞かねばならないと考えた為に。









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