始まりの時と見定める境界

「ルーク様、起きておられますか?」
「っ、あぁ、起きている」
そんな風に頭の中で会話をしていた時、扉の外からメイドの声が聞こえてきたことにルークは平然を装いながら返す。
「起きられたならすぐに来るようにと公爵様のお言葉です」
「父上が?分かった、下がれ」
「はい、失礼します」
そのままドア越しに報告をするメイドの声に演技の声を持って答えると、了承と共に引いていく気配をルークは感じる。
(『行ったか・・・つーかお前の時は確か部屋にガイが忍び込んできたんだっけか?』)
(あぁ、それなりに仲良くしてたんだけど・・・こっちのガイはやっぱりっていうか、予想通り来なかったな・・・)
(『まぁそりゃな・・・つーかいきなりあいつが気安くなって部屋に忍び込んでなんかきたら、俺の方が驚くっつーかむしろ怪しむってーの』)
(言いたくはないけど、確かにそうなるよな・・・)
それで『ルーク』の声に対してルークも反応するが、そこで出てきたガイの事に苦い想いを抱く。






・・・この一月の間、ガイの事については知ってはいたルークだったがどれだけ自分の所のガイと違うかについてを改めて強く実感していた。

決して従者としての態度を崩さず、丁寧な態度でこそあり距離も保ってくれている。その姿勢はファブレで働く他の従者に比べても見劣りするような物ではないのだが・・・事情を知っているからこそというのもあるからこそだが、その徹底した姿勢がルークからして自分やファブレとの距離感を大いに表していると言うように感じてしまった。自分やファブレには心を許すつもりはないと、頑などころではない拒否を示していると。

一応の覚悟はルークにもあった・・・だがあそこまで徹底した線引きする姿に、どうすればいいかという気持ちにもなっていた。これからの旅でどうガイに接した上で、どう対応すべきかを。






(『多分ガイはこっから先のティアの襲撃で俺っていうか、ルークが屋敷からいなくなって人が他にいなかったから嫌々捜索に向かったんだろうな・・・』)
(それはあるとは思うけれど・・・ガイを信じたいって気持ちがないことは否定はしないけれど、紫の話だとガイがこっち側についたこともあるって言ってただろ?その事から、ガイにも師匠に対する何かの不信があったとは思うんだよ)
(『あ・・・そういや言ってたな、そんなことを・・・』)
そんなガイに対しての心中を予想して苦い声を漏らす『ルーク』だが、そこで返された予想にハッとする。ガイが味方になったこともあるという事実があったことに。
(今も言ったけど、俺がガイの事を信じたいって気持ちは強い・・・けれどこれからの事を考えるとガイに敵に回られるような展開は俺としては避けたい。だからその為にも俺は動くつもりでいる)
(『まぁ俺も何だかんだで世話にはなってるし、事情を聞いちまったらそうするなって否定を返す事なんて出来ねぇけどよ・・・俺の予想だと変に情けをかけられると逆に離れそうな気がするぞ。ガイの心境に考えがどんなもんなのかは正確には分からねぇけど、俺やファブレの事が憎いってのにそんな奴らに情けをかけられて協力してたまるかって考えるんじゃねぇかって思うんだ』)
(ガイのプライド、か・・・分かった、その事は胸に留めておくよ)
それでガイを敵にしたくないとするルークに『ルーク』は自分の考えを述べ、その言葉に真剣に返した。心を通わせた仲間という関係ではなくとも、ガイと敵対しないように動くと。









.
4/19ページ
スキ