迷いと決意と揺れ

「ではお聞きしますが、彼女の今の戦いから彼女になら背を任せて戦いに集中出来ると自信を持ってお答え出来ますか?」
「そ、それは・・・」
「そう言われると、否定出来ないですけど・・・」
だがジェイドから返ってきた突き放すようでいて冷静な問い掛けに、二人は揃って口ごもる様子を見せる。
「でしたら話は簡単でしょう。背を預けられないと思うのでしたら、最初から預けないと思っておいた方が気持ちはまだ楽になります。それに彼女は自分が悪いと思っているというように認めるような事を口にはしませんでした・・・ならばいっそ彼女が戦う事を期待しない方が我々としても楽になりますし、ティアとしても戦わなくて済むならそれに越したことはないと思っているのではないのですか?」
「・・・はい。戦わなくて済むなら、私は別にそれで構いません」
「「っ・・・!」」
だからこそ戦わせない方がいいと言った上でそれがいいかとジェイドがティアに問い掛けると、悪びれる気もないように肯定を返したことに二人はまた苛立ちを表情に浮かべるが・・・
「・・・この話はここまでにしておけ。正直これ以上ここで時間をかけたくはないこともあるが、果敢に戦うと頷かせたとて似たような事になればその時その時で一々時間を取られるだけだ。ならもうそれでいいと思え・・・その方がこちらとしてもやりやすい」
「・・・分かりましたわ、アッシュがそう言うのなら・・・」
「・・・もう、仕方ないか・・・」
そこで面倒そうにこれ以上はいいだろうと入ってきたアッシュの言葉に、二人はようやく渋々といったようにそれでいいと口にする。



(『・・・ティアからしたらこれでいいってのか?なんつーか見栄だけは一人前どころの話じゃねー奴だってのは分かっちゃいるけど、こんな明らかに自分が悪いみたいな空気を認めるような奴でも無かっただろ?』)
(多分強気な態度を取り繕ってはいるけど、かなり余裕がないからそんな空気になってても気にする余裕がないんだと思う。廃工場での魔物もそうだったけど、今戦った魔物は普通の奴とは明らかに別格に大きかった上で強かったからな・・・だから怪我とかしたくないし死にたくもないティアからしたら、戦わなくていいんだって内心ホッとしてると思う。そこに皮肉が向けられただとか侮蔑みたいな感情があるって事に気を回す余裕なんて無いんだと俺は感じるよ)
(『あぁ・・・今のあの態度はほとんど自分は大丈夫って見せるハッタリみたいなもんだってことか・・・』)
そうして表向きは話はこれで終わりといった所で『ルーク』がティアの態度にらしくないと漏らすのだが、ルークの答えに納得する。他に気を回すというか、回せる状態ではないのだと。
(・・・ただ何て言うか、あんな姿を見せられると前の俺とティアの立場が丸々変わった上で、俺とは違う選択をしたんだって思うんだよな・・・)
(『前って言うと、確かタルタロスを脱出してからセントビナーに向かう時に神託の盾に襲われた時のことか?』)
(あぁ・・・あの時は俺は戦わなくていいって言われて疎外されるんじゃないかとか色々感じて俺も戦うって言ったけど、世界が違うって言ってもティアは迷う様子を見せることなく戦わないって言い切った・・・その事を考えるとどうにもって気分にな・・・)
(『あー、無理もない事って言えばそれまでだけど前との人との違いもあるからってこともあるからか・・・』)
その上でそんなティアが選んだ選択を複雑だと漏らすルークに、『ルーク』もどこか同情めかせた声を漏らした。こちらのティアが元と比べてもどうかという選択をしたことに。









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