思いの在り方と思想の在り方

「・・・待たせたな。少し時間がかかったが大丈夫か?」
「えっと・・・大丈夫なんですか、スピノザさんは?」
「・・・」
そんな時に二人がルーク達の元に戻ってくるのだが、普通に話し掛けるアッシュと青ざめた様子で黙りこむスピノザの対比にたまらずイオンは声をかける。
「少し説得の際に色々と言わせてもらっただけだが、その甲斐もあって頷いてもらった。気持ちを落ち着ける時間は道中で取れるだろうから、このまま行くぞ」
「は、はい・・・」
だがアッシュが気にせず早く行くように言ったことに、イオンは呆気に取られながらも頷くしかなかった。下手な言葉は挟めないままに。


















・・・そうしてタルタロスに三人を連れて戻った一行だが、スピノザの様子が一向に良くならない姿を見て一同はどういう話をしたのか聞きたいという事になり、タルタロスの一室に集まった。渋るようでいて諦めたような表情をスピノザが見せる中でだ。
「・・・さて、スピノザが何故このようになっている訳だが単刀直入に言おう。スピノザはヴァンの協力者となって俺の誘拐を手引きした者であり、先程の話をするまでヴァン達の協力者という立場にいたからだ」
「「「「っ!?」」」」
・・・そしてアッシュが真っ先に告げたまさかの事実に、場にいた面々は驚愕せざるを得なかった。スピノザがそんなことをしていたのかと、特に同じグループで活動していた二人が信じられないといった目を向けて。
「色々と言いたいことはあるかもしれんが、まずは俺の話を聞け・・・俺は父上の命令の元でローレライと音素振動数が同じということから、ベルケンドにて様々に体の調査をされていた。そうしている中でスピノザはフォミクリー技術についてヴァンから聞いて、その技術についてを知りたいという気持ちから俺の誘拐の手引きをすることと知識を引き換えにそうしたとのことだ」
「ス、スピノザ・・・なんてことを・・・!」
「・・・分かっている・・・わしがやったことは、やってはならんことだったということは・・・」
アッシュはそのままの空気の中で何故そうなったのかについてを話していき、ヘンケンがその中身に怒りを滲ませながら批難を向けると力ないながらも非を認める声がスピノザから返ってきた。
「話を続けさせてもらうが、そうしてフォミクリー技術についてを知らされる事になったスピノザだが俺をヴァンに売ったこともあるから、ヴァン達のやったことに関してを黙秘せざるを得なくなり奴らの協力者にならざるを得なくなったとのことだ。今更ヴァン達と離れたいだとか正体を明かすだなどと言ったところで、待っているのは自身もそうだがそちら二人も何も知らなかったのかと連帯責任で罰せられ最悪の形で幕引きせざるを得ない形になるのが目に見えていたから、それを避けるにはヴァン達の言うことを聞いて黙って従うしかなかったのだと」
「それならいっそキムラスカに正直に打ち明ければ良かったではありませんか!後ろ暗い事をしたのであっても、キムラスカなら話を受け入れていたはずですわ!」
「今言っただろうナタリア、父上の命令の元でと・・・俺の体の調査に関しては今となったから言わせてもらうが、非人道的と言ってもいい事をされていたことに加えてそんなことは何も表向きには起きてないと極秘で行われていたことだ。こんなことを公にしたなら王族の権威の失墜は避けられなくなるばかりではなくなり、父上に至っては我が子を実験の材料として扱った鬼畜な人物というように見られることになる・・・だからキムラスカとしては決してその事を公にはしたくはないだろうから、ヴァンに対する対処もあるだろうが何よりスピノザの口封じにかかるのは明白だった。例え事実ではあるとは言え、醜聞を撒き散らされてはかなわんからとな」
「なっ・・・!?」
だがそんなやり取りを取り上げずにスピノザの立場からの考えを口にしていくアッシュにたまらずナタリアが言えば良かったというように声を荒くするが、そうしていたらこうなっていたという仮定の答えに絶句してしまった・・・スピノザの身が危なくなることもそうだがキムラスカ、特に公爵の評価を下げまいとするために隠滅にかかるだろうとの物に。









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