思いの在り方と思想の在り方

「・・・ていうかイオン、お前としては俺はナタリアにどんな態度を取ってほしかったんだ?騙された形だっつっても婚約者だったんだからとか、七年も一緒にいたんだからもうちょい何か俺らの中で何かあるとでも思ってたのか?」
「・・・正直な所、何かあるのではと・・・」
「ま、どう思うかなんてのは自由じゃあっけどそうして自由に考えた結果としてナタリアがろくに俺に話しかけねーって結果になってんだ。そして俺はそれを受け入れてる・・・アッシュとどうにか仲を深めたいって思ってるナタリアをな」
「・・・その当の本人である俺としてはあのナタリアの姿は歓迎していないから、どうにかなってほしいと思っているがな」
「アッシュ・・・!?」
そう話してどうなのかと聞いたルークは自身の考えを口にして行くのだが、そこで疲れたようにナタリアに対する気持ちを口にしたアッシュにイオンは信じられないような物を見る目を向けた。
「落ち着け、導師。俺がそう思っているのはルークの事もそうだが、周りを冷静に見れていないからだ。確かにナタリアは俺の事を想ってくれてるのかもしれん・・・だが今お前が言ったように今まで七年近くの時間を共に過ごしてきた筈のルークに対し、自覚の有り無しは別にしてもそんなことを気にする素振りもなくほとんど見向きもせず話しかける事すら稀と来ている。その上でバチカルに戻ればどうにかなるしどうにかしてみせるから、早く戻ろうといったように言うあの姿に冷静さを導師もそうだがアニスも感じたか?」
「あ~・・・確かに冷静どころかむしろ真逆でしかないってイメージある・・・というかその関係の話をしてる時のナタリアが鼻息荒くしてないって感じに話をしてるの全く見てないよ・・・」
「っ・・・アニスの話を聞いたのもありますけど、否定出来ません・・・ナタリアが冷静かと言われると、とても・・・」
だが動揺などなく逆にナタリアが冷静かとアニスも含めて問いかけるアッシュに、二人ともに何とも言いがたそうにしながらも頷くしかなかった。特にイオンは悪し様にナタリアの事を言いたくはないがというよう。
「ナタリアの気持ちに関しては全く分からんとは言わん。だが昔からあの性質が変わっていないと言うことは道中の様子から分かってはいるが、だからこそ冷静になどなれんだろうと言うのも分かっている。例え冷静になれだとか考え方を変えるようになどと言われてもそうそう易々とは変わらんだろうが・・・そもそもナタリアがルークに対してどんな態度を取るのが正解だと導師は思っているんだ?」
「えっ・・・?」
「自分で言うのもなんだが俺が本物の『ルーク=フォン=ファブレ』であることにナタリアと七年前以前に約束を交わした存在であることには違いはない。そこから様々にあって今に至るわけだが、俺はまだいいだろう。百歩譲って本物に会えた訳だからはしゃいで浮かれ、想い人の前でそうなるのは・・・ただしルークにも全く同じとは言わずとも、そんな態度で接するのが正しいと導師の立場から言えるか?」
「そ、それは・・・」
「そう、それは正しいことではないだろう。ナタリアからすれば想いを向ける相手は俺であって、ルークではない。ナタリア自身もそれを良くわかっているからこそルークにはそんな感情や態度を向けんのだろうが、だからこそ・・・それ以外の事をルークに考えずに接してきたナタリアがルークへ抱いていた興味感心はほぼ無くなっているに等しいが、そういったような事を俺は歓迎していないと言ったんだ。興味のある事柄かそうでないかで露骨にやる気が変わることもそうだが、興味のない事柄と向かい合う事についてを本当に必要に駈られなければ行おうとしない事にな」
「なっ・・・!?」
そうして畳み掛けていくアッシュからの言葉に、イオンは絶句するしかなかった・・・話の内容を要約するならそれはルークに対する関心はナタリアの中にはまずないという物であった為に。









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