足を運び命を運び

「ただ救いと言っていいかはともかくとして、その子ども二人は利発に成長していきました。ナタリアの教育があったならあれほどに冷静な子どもとなったのかと思うほどにです」
「あ~・・・アッシュや周りの従者に教育係達が頑張ったのが大きいってことか」
「勿論それが一番にあるとは思いますが、ナタリアを反面教師にしている部分が無かったとは言えないでしょう。前に話した食料に関してキムラスカに滞在していた時の事ですが、あれは当時アッシュが三十程の事で私もその子ども達と出会う機会がありましたが・・・ナタリアに早くどうにかするようにと言われた後、その二人の子どもに同情的な言葉と視線を向けられました。お母様がすみません、とね」
「え・・・まだ十にも満たない筈だろ、その時の二人って?」
「そうですが、それだけナタリアの激しさはバチカルの城の中では当たり前だったのでしょう。即断即決に即時の解決を求め、様々な方々を困らせてきたことは。だからこそアッシュとは敵対していないにしても、対照的に動くナタリアの事を周りもそうですが二人が反面教師にしていてもおかしくはなかったと私は見ています。二人がナタリアを嫌っていたかどうかまでは分かりませんが、少なくとも教材としては反面教師にはうってつけでしたからね」
「えぇ・・・というかそこまで来ると最早二人が反面教師にしてないって思うには色々と無理がある気がする・・・」
「流石にその辺りはアッシュも聞いていないでしょうからなんとも言えませんが、私もそう思います」
ただとその二人の子どもがどう成長していったのかの中でナタリアが反面教師にされたのではと予測するように言うと、そのエピソードにルークは否定出来ないというように力なく口にするしかなかった。否定する材料より、肯定の材料の方がどう見ても多かった為に。
「まぁそんな風に成長していった二人に関してナタリアはもう少し積極的になれば言うことはないのにというように言っていましたが、積極的と言うよりはナタリアの場合は勢いに任せて言葉を口にしているといった方が正しかったですからね。その点でナタリアに似なくて本当に良かったと思いましたし、そうだったならアッシュが自身の跡を継がせると決断する時期はまだ後の方になっていたでしょう」
「それは良かったかもしれないけど、退位ってアッシュが決めてもナタリアは納得しなかったんじゃないのか?確実に私達はまだやれるではないですか辺りの事は言ったと思うけど・・・」
「そこは時間をかけて自分達がやれるだけやって命を落とすかどうかの時に玉座を譲るか亡くなって引き継がせるより、子ども達を信じて困ったことがあるなら手助けをしてやるべきだというように説得していったとの事です。ナタリアは納得はすぐにはしてはいなかったものの、インゴベルト陛下に公爵達がそうしたのを引き合いに出されてようやく引き下がったとのことでした。そこはアッシュが帰ってきて一人目の子どもが生まれてからそのような形で玉座をインゴベルト陛下が譲り、しばらく後に亡くなるまでそのような形で政治に関わっていたことから、渋々とそういうことならと言ったそうですよ」
「そうか・・・というかもう叔父上や父上達もその時になったらいい歳だから、亡くなるのも仕方無いよな・・・」
そうして二人の子どもの成長から話題は王位継承についてになりジェイドがどうやってナタリアを説得したのかになる中、ルークは納得しつつも重い表情を浮かべた。玉座を譲る年齢の時ならもう70に80を行くくらいの年齢になるインゴベルト達が亡くなっていて、そう認識した悲しみで。









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