足を運び命を運び

「・・・ただその貞淑さというか、性に関して潔癖であったことが却ってアッシュの重荷になったのは確かです。ナタリアはアッシュと共に政治を行いたいという思いがあった・・・ただしそれは幼い頃からの考えをそのまま変えない形のまま持っていて、そこに自身の子どもであったり性的な行為に関してを考えに入れていなかったからそのまま生きていってしまった・・・それこそ他に誰か王族の跡継ぎ候補がいたり、周りからの進言がなければナタリアから子作りに関してを口にしたかどうかも怪しかったでしょうね」
「そうなったとしても相当に時間を食ってからで自分の気が済むか、子どもを生むには厳しい年齢になってるからって進言されてようやくとかって感じになるんだろうな・・・そう考えるとアッシュや周りから言わなかったなら、本当に子作りをしたかどうか怪しかったと・・・」
「少なくとも私やアッシュはそう思いましたね。そもそもは女王という立場になればこそ、実権を持たない王ならばまだしもアッシュが仕事をするのは確かなのですから自身は子作りに子育てをメインにし、無理をしないようにと与えられた公務に殉ずるのがナタリアに求められた役割です。それをアッシュの隣にいるのだし共にキムラスカを変えていくのだからということで、同等の立場と量で公務に挑みたいし私がやるべきだと考えて軽視していたようですがね」
「うわぁ・・・そういったことを聞くとナタリアに子どもに対する愛情があったのかどうかっていうより、そもそもどう接してきたのかが気になるんだけど・・・」
ただ話を続けようと気を取り直してまた話し出すジェイドから出てきたナタリアについての行動に、ルークは子どもに対して親としての自覚や気持ちがあったのかと若干嫌な予感を感じつつ問い掛ける。
「貴族や王族としての生活に関しては貴方の方がよく分かっているかとは思いますが、基本的にそういった方々の教育に世話は周りの従者や教育係などが行い、乳飲み子なら授乳の関係で多少は日常で苦労はするでしょうが基本的には周りに誰かいてサポートはします。その点でナタリアに子どもに対する愛情は無かったわけではないのは度々会ってきたから知ってはいますが、その周りの環境があることに加えて自分が公務に関わりたいということから、親として子どもと話したり色々と教える時間はあまり設けていなかったそうです。この辺りはナタリアの性格的に自分の子どもなら母の愛情は何も言わずとも分かってくれるであったり、背中を見て育ってくれるといった気持ちがあったからだと見ていますが・・・子どもは態度を見て察しろなんて事を言われても出来ませんし、アッシュの子どもでもありナタリアの子どもでもあります。そんな子どもが言葉などなく親としてというよりは好きな者と共にありたいという気持ちで動く存在について、尊敬出来ると貴方は思いますか?」
「あ~・・・子どもの立場から言ったら確かに言葉もそうだし、ナタリアの性質を受け継いでるって考えるとちゃんと言葉にしろよって思いそうだな・・・自分の事は自分でよく分かってるし他人もよく分かってるし何より自分の子どもなんだから、言わなくても母の愛情は分かるでしょうって考えてることに対して分からないってなる形でさ・・・」
「そうです。アッシュはその分忙しい公務の合間に子ども達との時間を作って接してはいたようですが、ナタリアは自分がやりたいようにやることに執心に動くことがほとんど・・・愛情が無かったわけではないにしても、取るべき時間を取らず伝えるべき物も伝えず親としての責務も立派に果たしているとナタリアは考えていたんです。アッシュから実態を聞いていた上でナタリアにもオブラートに包んだ話をした事もありますが、問題ありませんと自信満々で返して改善する様子もなかったその姿にどうしようもないと助言程度ではどうしようもないと私は諦めましたけれどね・・・」
「うわぁ・・・」
だがジェイドから予想以上の答えが返ってきた上にやたらと疲れた様子の伺える言葉に、ルークもたまらず引いた声を漏らすしかなかった。ナタリアがあまりにも自分の都合のいいようにしか事を考えてはおらず、アッシュもまたいかに苦労してきたのかの一端を垣間見る形になったことに。









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