足を運び命を運び

・・・そうしていくらか話をした後、二人はタルタロスに戻りノワール達との会話と自分達の考えについてを話せる部分をティア達に話した。






「ワイヨン鏡窟・・・確かキムラスカの領内にある特殊な鉱石が取れる場所だとお聞きしていますが・・・何故そんなところをヴァン達は拠点としているのですか、アッシュ?」
「あそこで取れる鉱石が特殊であることもそうだが、やはり人が行き来するには船を使わねばまず辿り着けん環境にあることだ。加えて特殊とはいっても別にその鉱石が無ければキムラスカが困るような事例もなく、人の行き来どころかここ数年でヴァン達以外にワイヨン鏡窟に立ち入るような事もなかったらしい。そんな場所で船さえあれば絶好の隠れ場だと知っていたからこそ、奴らはワイヨン鏡窟を隠れ家の一つとして選んだというわけだ」
「嘆かわしい・・・そのような形でヴァン達の好きなようにされるなどと・・・ならば事が済んだ後にはそのようなことがないよう、良からぬ企みを持つ者が出てこないようそういった場所に人を配置するようにしなければ・・・!」
「人の行き来がないということは、そこに人をやる理由・・・言うなれば仕事がないし必要もないと言うことだ。それを不審者が来るかどうかを見張るためだけになど人をやったところでそこに誰も来なければ仕事にはならん事もそうだが、食料だったりをそこに就く者達の為だけに輸送するのは言ってはなんだが時間と税金の無駄になりかねんし・・・何より大軍で来られたなら見張り程度にしかいない人員ではどうあがいても太刀打ちは出来んだろうし、定期的に挙げるだろう報告書を偽造されれば異常なしと見られる可能性は極めて高いだろう。そうなれば犠牲者がただ出たという結果にしかならん」
「だからそんなことは出来ないということですか・・・くっ・・・!」
・・・そうしてタルタロスのブリッジにて話をした二人だが、ナタリアがヴァン達に場を自由に使われる事についてを怒りを覚えるがすぐにアッシュからの言葉に悔しげに表情を歪める。現実的ではない上、そんなことになったなら犠牲者を出しかねないと聞いて。
「ワイヨン鏡窟・・・そこに兄さんが・・・」
「大方そのワイヨン鏡窟に行って直接話したいとでも思ってんだろ、お前」
「っ・・・だったら何よ・・・!」
ただそんな中でティアが何かを考えたような口調でポツリと漏らすが、ルークがその心中を察したという声に正解だと言わんばかりに苛立ちの声を向ける。
「んな苛立ってんじゃねーよ。今の話にも出たけど船じゃねーと行けねー所だってのもそうだけど、話の感じからしてあんまり街とか村とか近くにあるような所じゃねーんじゃねーのかそこ?」
「あぁ、それは確かだ。ワイヨン鏡窟は海から船で行き、反りたつ岸壁の中にポツンと空いている洞窟から入る以外には上の荒野部分を歩いて決死のロッククライミングでもしなければそこには辿り着けんような辺鄙な所にある。そして今ルークが言ったように街や村など船を使ってもそう近くはない上、一般の船もまずワイヨン鏡窟辺りを通ることはないくらいには人気はない。だからこそヴァン達の隠れ家として最適である上で船やこのタルタロスなどで向かわねばまず辿り着けんが、まだ奴らと対峙するつもりはないし船も一個人が払える金で動かせは出来んだろう。だから今すぐ会いたいというのは諦めろ」
「くっ・・・!」
ルークはそんな様子を意に介せず話をアッシュに振り、そのまま向かうことはまず出来ないといった旨の話を理由つきで述べると、ティアは気に入らないといった様子を隠しもせず敵意のこもった声と目を向けるしかなかった。行けはするが、行く気はないといった返しが気に入らなかったのだろう様子で。









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