足を運び命を運び

「予想はしてたんならもうこっちにあれの処分を任せたらどうだい?正直、途中で逃げ出したか死んだみたいなことを言って適当に誤魔化しておいた方がもう楽だろ?」
「楽なのは確かではあるだろう。だがガイが一応心変わりをしない可能性もないこともないだろう上で、あいつの立場や行動として生きて色々とやってもらいたいことが出てくる可能性もある。代表的な事としては、ヴァンを倒した後の動機の証言者になるかはともかくとしても証人だったりな」
「証人・・・あんたが何か言うなら問題はないだろうが、確かに謡将が行動を起こした動機を説明するにはあれの存在はちょうどはいいだろうね。ただどうしたって自発的に協力してくれるなんて風には思えないと思うけれど・・・」
「その時はその時な上に、やりようは見付けることはさして苦ではないだろう。ただやる気もそうだが、諦めを身に付けるつもりがないのならもう様々な目から見て終わらせる気ではいる」
「成程・・・そこまで決意が固いんなら問題は無さそうだね」
ノワールはそんなルークを見て自分達がガイを殺してもいいと言う中、アッシュが必要はないと冷静でいて覚悟の決まっているといった返しをしてきたことに一つ頷く。
「なら引き続きあれに関しちゃこっちに任せといていいよ。自殺をされるようなことだったりこっちを襲ってくるようなことがない限りはちゃんと面倒は見ておくさ」
「あぁ、頼む。それと事態が進めば奴らがそちらに俺達の居場所を探るなり言ってくるかもしれんが、下手に拒めばそちらの身が危うくなるかもしれん。だからそんな事があったら話を受けつつ、適当に誤魔化すであったり当たり障りのない情報を向こうに渡してくれ。その方がそちらの安全にも繋がるだろう」
「あぁ、分かったよ」
そうして話はまとまったとしつつもアッシュからの気遣いの見える忠告に、ノワールは快く頷いた。下手を打つ気はないがと。


















・・・そうしてノワールとの話を終えた二人はすぐにはタルタロスに戻ることなく、街角の一角に変装した状態で立ち止まっていた。
「船でどこか人目のつかない所に、か・・・パッと思い付く候補地はワイヨン鏡窟辺りだけど、何か師匠達が他に拠点にしそうなとこに心当たりはあるか?」
「無いとは言わんが、まずワイヨン鏡窟以外に無いだろう。あそこは人目を避けるには最適である上、今となっては手勢のほとんどを引き連れているだろうヴァン達がまとめて身を隠せる規模の場所はそうそうない。精々自分の兵はダアトの者達に怪しまれないよう引き連れていくにして、半分といった数が限度だったからな。それを全部引き連れてとなればどうしても隠れ家程度に作った場所では広さは限られてくる」
「だから今隠れてるところはワイヨン鏡窟で間違いないだろうってことか・・・」
そんな二人が話し合うのはヴァン達の行き先についてなのだが、ワイヨン鏡窟という予想は当たっていると根拠を話していくアッシュにルークも神妙に受け止める。
「だから取り敢えずしばらくは目立った動きはないだろうが、いつまでワイヨン鏡窟に留まっているとも限らんしシェリダンやベルケンドに来るとも限らん。ここを出立したなら出来る限り早めに動いた方がいいだろう」
「まぁそりゃな・・・ただやっぱりガイに目立った変化はなし、か」
「それこそ予想していたことだ。今更驚きも何もないが、ならばこそ取れる手段もある・・・とは言え今の状態ではその手段は使えないから、もう少し状況を進ませる必要はあるがな」
それで早めに出発をと言う中でガイの事をやはりと口にするルークに、アッシュは取れる手段があると口にする。ガイ当人が聞いたなら確実に眉を寄せるだろう様子で。









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