足を運び命を運び

「納得していただけたなら幸いですが、こちらとしてはそのような形でルークが戻るのに時間を食われてしまうのは避けたいことなのです。なので彼女が裏切るかどうかだったりもしその時に我慢出来ずにぐずってしまうなど面倒ですから、手を加えさせていただきましたわ」
「それはありがたいが、この際に聞いておきたい・・・そちらの目から見てティア以外に何か問題はある者はいるのか?」
「あら、私の手をお借りしたいのですか?」
「手を借りたいのではなく、どう思うかを聞いているだけだ。そちらは手間を嫌ったからこそ敢えて手を出してその報告に来たようだが、だからと言ってそちらの手を都合よく借りようとは思わん・・・あくまでその気や考えがあるなら、ついでというくらいで話してくれればいい」
「あら、そういうことですか」
紫がその反応に満足げに話を進めていくのだがアッシュが話題転換とばかりに話をしていく中、話の中身もあいまりどこか油断ならぬ張り詰めた空気がどこか漂う中で紫は笑顔を見せる。相も変わらずな胡散臭い笑顔を。
「と言っても貴殿方が先程話されていたアニス、彼女くらいですわ。王女様はさして驚異ではないというより、貴方が苦労なさるのでしょうから問題はありませんわ」
「・・・俺に対する何か嫌な物は感じられるが、やはりアニスか・・・」
「えぇ。と言ってもやはり問題は彼女自身ではなく、その両親・・・彼女にとっては鎖に繋ぐ必要のない人質を取られているというような状態ですわ。そしてその両親はそう言われたとしてもそんなことはないだろうと楽観視するだろう上で、悪い方向には決して物事を考えようとはしない・・・これほどに人質として楽な存在はいませんが、だからこそ相手方となるにはこれほど厄介な存在はいませんわ。言葉でどうにかしようにも暖簾に腕押しという状態にしかならず、力でどうにかしようにも場合によっては自らの死をも厭わない事が出来る・・・信ずるものの為に命をかけることが出来るのは良いことと思われるかもしれませんが、自身の生への執着がないということはその信ずるものの方に重さの比率が高くなれば例え悲しむ者がいても、そちらを優先してしまう可能性も十分に有り得るのですからね」
「・・・それは、両親が状況次第では自分から死にかねない事を選ぶことも有り得るということか。そしてアニスが悲しもうが、両親は満足げに勝手に死んで遺恨やら何やらを生み出すといったことの懸念が起きえるとそちらは見ている・・・と」
「貴殿方の今の様子ならそういった危険性は無いとは思いますが、例えモースがいなくなったとしても両親はそうなりかねないということは有り得ますわ」
それで返ってきたナタリアに関する然り気無い言葉にアッシュは微妙に表情を固くするが、紫が続けた話にアッシュだけでなく二人も複雑そうに表情を歪める。アニスや他の者達の想いは関係ないどころか、むしろ正着点だとばかりに穏やかに死んで・・・より自分達が面倒になりかねないと。
「・・・諦めて見極めることが時として必要になると言いましたが、二人の事に関して何か諦めることは必要になりそうですね」
「諦めるって・・・両親の身の安全とかアニスを助けないとか、そういった何かどれかをってことか・・・?」
「えぇ。と言っても私から言わせればですが、両親の改心は優先しない方がいいとは思ってます。紫からの話を聞いたのもありますが、とても両親の為に説得をしてもうまくいくとは以前の二人にアニスの状態もあって思えません。まだそれなら言葉は悪くともアニスを騙して両親に見切りをつけた方がこちらも楽になりますし、失敗した場合のリスクを考えればそちらの方がいいと思います」
「あ~・・・否定が本当に出来ないのがな・・・」
ジェイドはそこで仕方無いというよう選択について・・・特に両親の事に関してを口にして行き、ルークは辛そうながらも言葉通り否定が出来なかった。もう今となっては両親の事を大丈夫だなどと判断出来ないと思ってしまってる為に。









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