足を運び命を運び

「言ったでしょう、彼女が封呪の解除の痛みに耐えきれるかどうか分からないからと。その点でいつ貴方達が謡将と相対するかはまだ確定はしていないけれど、そもそも謡将の事を餌にしても彼女では良くて二つ目のパッセージリングの封呪の解除が出来た所で音を上げるのが関の山だと思ったの」
「二つ目・・・」
「前の彼女の事もあるからそんなことはないと思いたいのかもしれないけれど、自分の元に敵が来ることを極端に嫌がる彼女の姿はアッシュはともかく二人は見たでしょう?あの姿は彼女が本当に自分の元に来させるのが間違いだと思っているのもそうだけれど、強い痛みの経験が全くに等しいレベルでないからよ」
「全く、ですか・・・それだけこちらのティアは致命的な痛みに危険とは縁遠い戦いにばかり恵まれていたのでしょうが、だからこそ貴女は彼女が謡将の為でも痛みに耐えきれない可能性の方が高いと見たということですか」
「えぇ。被虐趣味がどうこうなどと言うのではなく、痛みは慣れと覚悟が無ければ強ければ強いほど耐えきれる物ではないわ。その点で彼女はそんな慣れ以上に覚悟なんてとてもあるとは私は見ていません・・・ですからこその私からの手助けなのです。それで彼女にぐずられてルークが戻る時間が遅れることになれば私もその時間を待つだけなのは面倒ですし、それだけ幽々子が待つことになりますからね」
「あぁ・・・そういうことか」
紫はそうしたのはティアの痛みへの耐性が理由にあるというように言うのだが、ニッコリとした笑みから自分と幽々子の事からだというその様子にルークは呆れたように納得した面持ちを浮かべた。
「・・・それで納得するのか、ルーク?」
「まぁ付き合いはそれなりにあるから紫らしいなって思ったくらいだよ。ただまぁ・・・判断的に実際そうしてくれるのはありがたいとは思ったよ。ティアがキツくないならってのもあるけど、やっぱりこれから先言うことを聞いてもらえるかどうかってのは痛みの事を聞いて微妙だってのは感じたからさ」
「あぁ・・・確かに今の話を聞いたならそれは感じたな」
「良かったですわ。満足していただかなかったならまた設定を同じように戻さなければなりませんでしたから」
「それはやめてくれ・・・」
アッシュはそんな反応につっこむがルークがらしいと言いつつも助かったとの言葉に同意するが、笑顔のままの紫の言葉に脱力気味に首を横に振る。
「・・・確かにそうしていただけたのはありがたいのですが、裏を返せば貴女が直に動かなければならないと思うほどには彼女が厄介だと思ったということですか」
「えぇ、それはもう実に。意志が強いというのは端から聞くなら魅力的な事と思えるかもしれませんが、彼女の場合はそれを貫き通す強さを持ち合わせていません。いえ、正確には分を弁えていないのです・・・どちらの彼女にも言えることとして自分の出来ることに出来ないことと力量を見極めた上で、諦めるか否かを判断することを。ですからこそ彼女はこちらでは謡将の事を認められず、前の方ではルークを諦められなかった」
「っ・・・」
「・・・そうですね。諦めるというのは一見悪いことのように思えますが、自分に出来ないことを見定めるという意味では時として必要な事です。しかしそういったように出来ないのは気持ちとしては理解は出来ない訳ではないにしても、その考えに引きずられ判断を誤るのは望まれる事ではないのは確かですね」
ただとジェイドがティアの厄介さについてを口にした後に紫が笑みを消してどうしようもないと扇子を取り出して口元を隠しながら返した言葉に、ルークがたまらず苦い顔を浮かばせるがジェイドは静かに同意した・・・ティアが分を弁えていないというのを互いが互いに理解したというよう。









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