足を運び命を運び

「・・・成程、そろそろアニスの事をどうするか方針を決めたいということですか」
「現状ではモースに情報を渡しても自分も含めて危険なだけと知ってからスパイとしての活動を止めてはいるが、だからと言って根本的な解決をしたわけではないからな」
「あぁ、そうだ。だからどうにかしたいんだよ」
・・・それでタルタロスの一室の中、ミュウをブリッジの兵士の元に何か異常があったら私達に伝えに来てくださいと言って置いてきた為、三人しかそこにはいない。
そこでルークからの話を受けて二人も納得したように頷きはするが、二人共に表情を苦く変える。
「ですがアニスをどうこうというよりは、彼女の両親をどうにかしなければまず根本的な解決にはならないでしょう。彼女がスパイをやらなくて済むようになるにはモースと事実を知っている者がいなくなれば事足りるでしょうが、やはり両親の借金癖をどうにかしなければ変わりません」
「ただあれだけの人の良さというか、アニスを含めた自分達に関して幸福は誰かの為にあるという考えを持っているのを変えられなかったからこそそうなったんだ・・・正直な所として、両親が借金が消えた上で病気辺りで早目に亡くなるくらいでなければどうにかならんだろう」
「病死・・・あ~、アニスの性格的に誰かに殺されたってなるとアリエッタの時みたいに行動せずにはいられないだろうってことか」
「あぁ。そしてそれがうまくいったとして、両親が殺されたとなれば今まで頑張ってきた反動からの喪失感で心の拠り所がないまま生きていく羽目になるだろう。だがまだ病気で死んだとなればその事実を仕方無いと受け入れやすくはあるだろうが、そんな都合のいい状態などならんだろうし何もなければまだまだ二人は生きるのは前のことから証明済みだからな」
「あ~・・・死んでほしいって願う訳じゃないけど、自然にそうなるのをどうにかって思うのは無理があるってことか・・・」
ただやはりそこで問題になるのは両親の方だというように考えを口にしていく二人に、ルークも重く納得するしかなかった。決して両親の問題は簡単ではないのだと。



「お話し中失礼しますわ」
「「っ!?」」
「おっと・・・どうしたんだよ、紫?いきなり現れて」
「フフ、少し手助けの為に来たのよ」
「手助け?」
・・・そんな時に三人の横から唐突にスキマが開いて紫が現れ降り立って来たためにジェイドとアッシュが驚きに目を見開く中、慣れたものとばかりに軽い驚きの後に平然とルークが対応するのだが微笑を浮かべながらの手助けとの言葉に首を傾げる。
「貴殿方の旅路がこれから佳境に入っていくのは観察してきたので分かってるけれど、その中で一つ懸念があったから私が手助けをしに来たの」
「だから何を手助けしにだよ?」
紫もまたそこで平然と話を始めるのだが、繰り返された手助けとの言葉に三人揃って眉を寄せる。
「パッセージリングの操作の為に三つの封呪がありその内の一つは意味がないものとなっているとのことだけれど、ダアト式封呪に関しては導師がいるから誤魔化しはきかないのは分かっているから仕方無いわ。けれど残ったユリア式封呪に関してはこちらでの彼女の性格的に、流れ込んでくる障気の痛みに我慢してまで貴方達の為に付いていくなんて答えを出すかどうかは分からない・・・だからそんな可能性についてを考えて、貴方達の目下の目的地であるシュレーの丘のセフィロトの封呪を解いた際に彼女に障気が流れ込まないように細工をしたのと同時に、もう封呪の解除の為に彼女を連れていかなくてもいいようにしたわ」
「っ・・・そんなこと出来る、いや出来たのか・・・?」
「紫なら出来るよ、アッシュ。境界を操れる紫からしたならそういった封印だとかの仕組みを理解してどういう風に自分に都合よくするかもそうだし、綺麗な第七音素と障気の境界を分けるだろうってことも出来るだろうとは思う・・・ただ何でいきなりここで現れたんだ?俺達が無事に事を終えるまでは紫はもう姿を現さないって思ってたんだけど・・・」
紫はその手助けについてはユリア式封呪のかなり都合のいい仕様にすることだというものでアッシュはその中身にたまらず目を丸くするのだが、紫の事を知っているルークは納得はしているが何故今ここにと代わりの疑問を向ける。









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