移動と選択

「だからナタリアに関しては同情もそうだが、余程でなければ庇いだてをするようなことは言うな。それに今の話もだ・・・今のナタリアにそんな話をしても迷惑をかけないと意地だけで否定するのは目に見えているからな」
「それは・・・言いたいことは分からなくはないですけど、ナタリアの事はすぐには解決出来ないんですか?話を聞き入れてくれないならそもそもどうしようもないと思うんですが・・・」
「・・・バチカルで叔父上達に話をするまでは待つしかない。俺達がいくら言ったところでお父様達はそんなことはないと否定するだろうから、実際に叔父上達からの厳しい言葉が無ければナタリアは自分の考えが間違ってないということを思い続けるだろうからな」
「そうなんですか・・・」
故にと話自体はしないよう理由も口にしていくアッシュに、イオンは何とも複雑そうな表情を浮かべるしかなかった。今の自分達では何ともしようがないということに。



(『アッシュはこう言ってるけど、その時はまず間違いなくナタリアの想像を遥かに超えたダメージを負う時なんだよな・・・』)
(あぁ・・・間違いなく入れ換えの事は明らかになるのは間違いないし、その上で俺達は叔父上達を説き伏せる形でナタリアをアッシュの結婚相手から引きずりおろす事になる・・・叔父上達の反応やどういった風な決定を下すかにもよるけど、ナタリアには辛い事になるのは明らかなだしな・・・)
そんなやり取りを端から見ていたルーク達は何とも言いがたそうな声で会話をする。決してナタリアにとっては明るいと言えるような未来は待っていないだろうといった中身の。
(『・・・しかしまぁホント、改めてナタリアの強情さっつーか考えを変えない感じってすげーな。自分が正しいって思ってるってのもあるんだろうけど、あそこまで自分の考えってヤツで押し通そうとするんだからよ』)
(ナタリア的には正しいからこそそれを押し通すのが正しいって思ってるんだろうけど、だからこそ心をへし折られたら立ち直るのが難しくなるんだよな・・・入れ換えの事もかなり時間が経ってようやく受け入れられたって言うか、状況が良くて王女として復帰出来たから立ち直れたようなもんだし・・・)
(『でも今回はナタリアが王女として復帰出来ないようにするから、それがどうなるか分からない・・・か』)
(ピオニー陛下がアッシュやジェイドの言おうとしてたことをほぼ代弁する形になったけど、それを真に受けてグランコクマに残るって選択してくれるならまた違った感じには出来るとは思うんだけど・・・)
(『ならないんだろうな、まず・・・』)
更にナタリアの強情さについての話から先程のピオニーの話についてになり、ルークの微妙そうな声にまた『ルーク』も感じていることを口にする。色々と言いはしたし予想外のことはあれども、ナタリアが選ぶのは今のまま行くという選択肢以外ないだろうと・・・



















・・・そんな風に話をした後に一夜をグランコクマの宮殿の部屋で過ごしたルーク達だが、その朝になって少しした時に部屋に入ってきた伝令の兵よりアクゼリュス付近の大地が崩壊したということを知らされた・・・









正しいと思う物を心に浮かべども、他者の理解を必ずしも得られるものではない



単純に思うならばこそ得られるものもあれば、単純ではないからこそ得られるものもある



深く考えない単純さから選ばれた選択は幼稚と取られやすいものとなる



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