移動と選択

「そうだが、単純に聞くがそちらはアッシュ達と共に行動を続けるのか?」
「・・・何故今そのような質問をされるのでしょうか?」
「ジェイドからの手紙にあったが、殿下は自分の意志で今ここにいるのだろう。この件に関してをどうにかしたいからと。その意志に関しては素直に受け取りたい、と言いたいところだが・・・その中でバチカルを出ようとしていた時にそちらが自分の意志で付いていくと押し通したとあったが、そこに相違はないか?」
「それは確かに間違いではありませんが、それが何だと言うのですか!?まさかそんなことがあるから私にアッシュ達に付いていくなと言いたいのですか!?」
「いや、付いていくなとは言わん。だがそうするならこちらが是が非でも殿下に行ってくれと言ったなどと言わんようにしてほしいというのもそうだが、今から言うことから改めてここに残るかどうかを考えてほしいから言っているんだ」
「・・・え・・・?」
ピオニーがそんな姿に問い掛けを向けていく中でナタリアは自分を邪魔者扱いするのかと言わんばかりに不機嫌さを表していくのだが、どうとも要点を得ない答えが返ってきたことにどういうことかと戸惑いを浮かべる。
「・・・確かにこちらとしては殿下が協力したいという気持ちはありがたくは思う。しかし言い方は悪いし似たようなことをバチカルから出る時に言われただろうが、こちらが殿下に協力を願いだしたなどと言ったならあちらがこっちに言いがかりをつける理由を一つ増やすことになる・・・殿下をそそのかしたのはマルクトだとな」
「なっ・・・!?」
「似たようなことを言うと言っただろう?・・・言ってはなんだが俺はジェイドの手紙からここでの話が進んで何も言わなかったなら、さも自分はマルクトに請われたといったように言いかねんからそう言ったんだが・・・ジェイド、俺の言ったことに殿下がそうしないと否定出来るか?」
「いえ、それはありません。殿下の考え方は旅の最中に大方把握致しましたが、そのような時には大義名分は我にありということもそうですが周りも我が意に全て同意をしていると過大解釈をしかねない動きをされると考えました。それこそ今の話ならマルクトも自分を後押ししてくれるというようにです」
「っ!?・・・ジェイド、貴方・・・!」
「すまないが殿下、ジェイドの言葉は俺の考えをほとんど代弁してくれた。それはつまり、俺の言葉と同義ということだ」
「っ・・・!?」
そんな様子に仕方無いといった空気を滲ませつつも言いたいことの中身をジェイドに言わせ、それが自分の考えだというように口にしたピオニーにナタリアは唖然としたといった表情を浮かべた。
「・・・確かに殿下は立場として大きな影響力を持ってはいる。その上で殿下の言葉や行動により事態がいい方向に動くこともないとは言えないだろう。しかしその行動がいい方にだけしか影響を及ぼさないというように考えていないからジェイド達は殿下の事を言質付きで許可したのだし、ならこちらもその言質を取りたいと思うのは当然だろう。マルクトが殿下をそそのかした訳ではなく、あくまで個人で行動したのだと・・・ただここまで聞いて改めて自分がどうしたいか以上に、どうするべきかについてを今日のこの後の休息の時にでも考えてほしいと考えたからこう言ったんだ。ここに残ることもまた殿下が選べる選択肢であるとな」
「・・・ですが、私は・・・」
「どうするかについてはここで論ずる物じゃなく、明日にまたここに来てからにしてくれ。その時の答えで色々と決めていく予定だからな」
「っ・・・はい、分かりました・・・」
そうして今の話からちゃんとこれからについてを明日までに考えるよう有無を言わさず口にするピオニーに、ナタリアは何か言いたげながらも黙る以外に選択することは出来なかった。勢いが明らかに削がれた後だったこともあり。











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