移動と選択

「取り敢えずジェイドには俺からこの事は話しておく。そしてナタリアには当然だが、イオンにもこの事は話さないようにしてくれ。話の質からイオンがあらかじめ知っていたなら演技が出来んだろうこともそうだが、俺がこう言うと知っていたなら生のリアクションをするには不都合だからな」
「えっ?イオン様の性格だとナタリアに不利になるのは目に見えてるから反対するんじゃないの?」
「良くも悪くもイオンは嘘がつけん。どうにか俺達の説得で俺達に合わせるように嘘をつかせようとすれば、色々と齟齬が出てくる。ならばその時にさも俺が今思い立ったからこうだと切り出したなら、何も知らない二人と俺との会話から俺の言っていることの方が正しいとピオニー陛下も見るだろう」
「あ~、却ってそっちの方が嘘じゃないって強調出来るだろうからってことか。イオン様が嘘をつけないからこそ、その時の態度でピオニー陛下も納得するだろうって事でね」
それで話をジェイドにだけすると言った上でイオンに対する考えを口にしたアッシュに、アニスも納得した。言わない方が色々と都合がいいと。



(『・・・こう聞くとグランコクマでどうなるか、ちょっと微妙に危なくなる気がすんな・・・主にナタリアの事でよ』)
(でもこれからの事を考えるとアッシュからして必要な事になるのは目に見えてるから、ちゃんとグランコクマで行動をしとかないといけないからなぁ・・・)
そんな話を端から見ていたルーク達はこれから少しして向かうグランコクマでの悶着を思い、何とも言い難い気持ちを抱いた。確実にナタリアと問題が起きるという考えから。


















・・・そんなルーク達だが以降にはちょこちょこと会話はあったものの特に変わったことはなく、数日後にはまだ戦争になってないということから港は封鎖されてない状態だったためにタルタロスを港につけ、グランコクマへと降り立った。

ただそんな感慨に浸る暇もなく、出迎えもそこそこにジェイドが先頭となってルーク達は早速と謁見の間でピオニー陛下がお待ちになられていますという兵士の言葉から、宮殿の方へと向かった。



「・・・よく戻ってきた、ジェイド。それにそちらが親善大使一行か」
・・・それで謁見の間に入り、玉座に座るピオニーは以前初めて会った時のような気楽さは鳴りを潜めたように硬い声と顔で出迎え、揃って並んでいたルーク達はその様子にうやうやしくも頭を下げる。
(『聞いてたイメージと色々違う・・・』)
(ジェイドから手紙で色々知らされた事実の数々から、余裕が消えたんだと思う・・・前はまだ分からないことも多かったから、陛下自身もまだどうにかなるって楽観的な考えはあったろうしな)
そうして頭を下げる中で『ルーク』の意外そうな声に、ルークはこういう事だろうとピオニーの以前との違いについて返す。
「・・・顔を上げてくれ。そして早速だがジェイド、お前が見聞きしてきた物や事についてを報告しろ。道中より送られてきた手紙で大方どういった事態が起きていてオールドラントは実はこうなっていたということは把握したが、実際にお前の口から詳しく聞きたい」
「はっ」
そんなピオニーがそのままの空気で厳かに口を開き、命を受けたジェイドは簡潔に答えつつ説明を始める。今までの旅で起きた事についてを・・・









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