移動と選択

「・・・確かにそういった言い分で言えばナタリアを引き剥がすことは可能だろうな。そしてそうするかどうかは俺の考えによる、と」
「そうなりますが、私個人としては貴方には無理をしてまで彼女と共にいようとしてもらうことは勧める気はありません。貴方の事を心配してというのもありますが、以前私がキムラスカに期間限定で来た時のような事になるのを避けるためにもそうしていただきたいというのもまた本音になります。それに人が違うことから前と違う流れになる可能性が大いに有り得ることを考えると、また何か別のトラブルが起きないとも限りませんからね」
「・・・その時のナタリア次第ではそのトラブルの規模も厄介などという規模では済まなくなるということか・・・分かった、ナタリアについてはそうすることも含めて考えて進めよう。思うところはあれどもそういった危険性だったりを考えれば、安穏と出来る話ではないからな」
アッシュはそんな会話を受けた上でジェイドからの正直な気持ちを口にされたことに、ならと言うようナタリアと結ばれないようにする方向にすると神妙に頷くがルークが眉を寄せながら口を開く。
「・・・言い出した俺が言うのもなんだけど、本当にいいのかアッシュ?」
「・・・思うところはあるとは言っただろう。だが正直な所としてはそういった事をした方がいいという案に、少しホッとしたという気持ちが俺の中にあるのも事実なんだ。むしろ割合としてはホッとした方が大きいというのが実情だ」
「ホッとした・・・?」
「あぁ・・・自分で言うのもなんだが今も情がナタリアにないとは言わんが、それだけで全てナタリアを許容出来ないというのもまた俺の中の偽らざる気持ちだ。だがそれでも俺がナタリアの相手にならねばならないと思っていたのだが、そうしなくてもいいといった言葉を聞いた時にそういった考えがあったのか・・・とな」
「っ・・・」
・・・そこまで表情は変わらないまでもホッとしたという言葉と共に滲み出るアッシュからの心底の解放感を感じ取り、ルークはそっと息を呑んだ。それだけアッシュが思い悩んでいたというのもそうであるが、ナタリアがそれだけ重荷になっているのだと感じて。
「・・・取り敢えず考える時間に関してはバチカルに着くまではありますが、それまでに考えて結論を出すようにお願いします。私やルークは手助けは出来ますが、それからの事を考えれば早めに行動するのが望ましいですからね」
「分かっている。そうする時にはお前達に話をするように言うようにするが、どちらにするにせよ二人に迷惑はかけないようにするし近い内にどうするかを伝えよう」
「分かりました、その時をお待ちしています」
ジェイドもそんな様子を確認しつつ時間制限の事を口にし、理解しているといったアッシュの返しにならいいと頷いて返した。



(『なぁ・・・これ答えを聞くまでもねーんじゃねーか?』)
(気持ちは分かるけど、それは言わないでおこう・・・今はあんなだけど本当に昔のアッシュは自分で決めたことを生半可なことで覆そうとしなかったし、光明が見えたようなあの様子を見た後だと変にそうしない方がいいみたいな感じの事を言うと良くないだろうしさ)
(『だよな~・・・』)
そんな光景に『ルーク』は時間を置かなくてもいいのではとの響きで話し掛けるが、ルークも同様と言いつつ返すその中身に力なく返す・・・まず規定路線としてアッシュがナタリアと離れる決断を下すのはまず間違いないだろうというのを二人ともに感じつつ。









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