異となることをした影響

その声に対し、ルークは自分の体験を口にしていった。異なるオールドラントではあるが、自分がどんな風にここから先を動いてきた上でどんな体験をして来たのかを。

それらの話を聞いていき、こちらの『ルーク』は言葉を次第に失っていった・・・最初こそは自分よりいい環境じゃないのかみたいに悪態をついたりしたが、それでも聞いてきた中身はこれからこちらの『ルーク』が体験すること・・・あるいはそれ以上の過酷さが伴われている重さが伴われていたからだ。

この辺りは平行世界のとは言え同一人物であるからこそすんなりと受け入れられたものであるが、だからこそこちらの『ルーク』はルークが様々な経験を経てきた上でこういう人物になったのだと理解した。そして甘いと思ったその心は、あくまで自分ではないからこその考え方でありルークがこうなったのもある意味必然だったのだとも。

そこまで話を聞いたこちらの『ルーク』は、そんな理解を見透かしたと言ったように紫に言われた。これでルークの事を甘いと言えないのではないか、と・・・その言葉に否定を返せないばかりか、自分では無理だとも返した。先の事を知ったとしても、自分ではルークのようにやれないと。

・・・そういった話の流れからルークはこの話を聞いて自分に体を譲ってくれなくても構わないとこちらの『ルーク』に言った。紫達にアッシュ達は自分を生かすために頑張るし頑張ってほしいと言われたが、やはり自分がそのために誰かを犠牲にすることは気持ちが良くないからと。しかしその言葉に対してこちらの『ルーク』は別に構わないと返した、自分の体を使うこともそうだがお前がもらってもいいと。

何故と驚くルークだったが、今ここで中途半端に知識だけ与えられた状態で放っておかれても自分一人でどうしようもないことに加え・・・もしうまくいったとしても自分がどうしていいか分からないと、こちらの『ルーク』は返したのだ。百歩譲って自分がヴァンを倒した上で預言に詠まれた結末を回避したとしてもそこからどう生きればいいのかもそうだが、周りの状況が自分が生きやすい物となっているか分からないと。

その答えにルークはどうしてそう考えるのかと言ったが、代わりに紫が口にした言葉に絶句してしまった・・・要約すればヴァン達と戦える段階にまで来るにはガイやティアを始めとした裏切る可能性のある人物達の手綱を握り続けなければならないが、それで仮にうまくいっても以降に仲良くなるどころか下手をすれば寝首をかかれる可能性があるとの言葉に。

そしてこちらの『ルーク』もそういった終わりの後の事まではともかくとしても、事態が進めば自分がレプリカであることがバレることは多分避けられないだろうことに、こちらの『アッシュ』がアッシュにならないなら自分の立場にナタリアからどういう風に言われるか・・・そう言った不安があるとも言われた。

そこまで聞いてルークもこちらの『ルーク』が不安だとかを感じていることは分かったが、それでいいのかとルークはたまらず聞いた。そういった不安要素があるのは分かるが、生きたくはないのかと。その問い掛けに生きたいという気持ちはないとは言わないし世界をヴァンや預言に詠まれたような滅びにしたくはないが、自分では力不足だとしか思えないからお前に体をやる代わりにそうしてほしいとこちらの『ルーク』は真剣に返した。

そんなこちらの『ルーク』の言葉に複雑そうに表情を歪めるルークだったが、それならと紫が妥協案で出したのが今の二人の『ルーク』の精神同居なのである。もしもこちらの『ルーク』が生きたいというのであれば、紫が全て終わった時に自身の能力を用いて条件が整えば二人に分けるなり一人にするなりどちらにでもするようにすると。そしてその案に二人は頷いた・・・このままでは平行線を辿りそうだった議論に一先ずの結論を出すのを避け、ルークが体の主導権を握る形で動くことになったのである。









.
7/17ページ
スキ