盲目の愛を愛と呼べるか

「・・・ティア・・・今の話は本当なのか・・・?」
「ぅっ・・・・・・そうです・・・私は兄さんと教官が何かを話しているのを聞いて、どういった話をしているのかと聞いていたら・・・」
「そこでヴァンを刺し、そして真意を確かめる為にバチカルに向かったということか・・・何故そのことを言わなかったのだ・・・」
「だってそんなことを信じられる筈がないと思ったこともあるし、どうにか嘘だって確かめたくて・・・」
「っ・・・ティア・・・」
そんな中で市長が本当かどうかを確かめていくのだが、苦しそうに胸に手を当て自身の考えを口にしていくティアのその姿に何とも言いがたそうな声と表情になる。
「・・・随分とよく口が回るな。俺達が話を聞きたいと言っても頑なに口をつぐんでいたというのに」
「「っ・・・!」」
祖父と孫として、二人の空間になりつつある・・・そんな様相の中でアッシュが冷ややかな目と声を向けてきたことに、二人ともハッとしたようにそちらに視線を向ける。
「・・・市長、まずはそちらに聞く。今の話を聞いて、どのようにしようと思った?」
「どのように、とは・・・ヴァン達の事をでしょうか?」
「それもあるが、モース達やここの住民に対してどんな対応をするかだ・・・特にモースに関してになるが、今の話についてを聞いたところで奴がはいそうですかと全てを聞き入れ、こちらの言うことに従うとしてくれると思うか?」
「それは・・・彼の性格からすれば確かに簡単には行かないでしょうが、それでも我々の言葉であれば聞いてくれると思うのですが・・・」
「いや、それはない。むしろ反発するだけなのは目に見えている」
アッシュはそんな二人の内まずは市長にと質問を投げ掛けるのだが、モースの事を大丈夫ではと口にしたことに即座にアッシュは首を横に振る。
「その理由はいくつかあるが、まず確実にそんなことを言われても預言は真偽についてを考えることなどなく嘘だと断じることだ。モースの性格上自分にとって都合の悪い預言は預言ではないとなるのは目に見えている上、俺やティアの情報からとなれば敵からの情報など真に受けるかというように考えるのがオチだ。市長のようにティアやヴァンと繋がりが無いことからこれが一大事であり、嘘偽りのないことだと信じる筈はまずない」
「そ、そこまで言い切るのですか・・・」
「奴なら本心からそう言うだろうというのを確信しているのは確かだが、そうしなければ奴の立場に関わることもあってそう言わざるを得ん部分があるんだ」
「・・・大詠師の立場に関わる・・・?」
アッシュはその根拠についてを容赦のない言葉で口にしていくのだが、立場も関わるとの言葉に市長は眉を寄せる。
「簡単に言うならモースもフォミクリー技術に関してヴァンの口車に乗り操られる形にはなるが、一枚噛んでいるからだ。無論操られたと言ったことから分かるよう、ヴァン達の都合のいいようでいて計画については何も知らされぬ形でな」
「なっ!?」
「っ・・・」
そんな様子にアッシュが条件付きではあるがフォミクリー技術に関わりがあると口にすると市長はまさかといったように絶句するが、その影で・・・そっとイオンが拳を握りこみ唇を噛み締めている姿を見たのは、ルークとジェイドのみであった。









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