・・・最初、こちらの『ルーク』は酷くうろたえていた。ルークと顔を合わせたこともあったが、紫が屋敷の人間にバレないようにとスキマの中で話すようにと連れてきたが為に。

それでも一応こちらの『ルーク』には落ち着いてもらった上で、様々な話をしていった。流石に肉体を譲ってもらいたいと言う旨に関しては最初から口にするのははばかられた為にその部分は省いたが、それでもヴァン達の企みについてもそうだが『ルーク』という存在がどういう風に生まれたのかもだ。

この事に最初こそはこちらのルークも信じられないといった様子を浮かべていたが、話を聞いていく内に次第に話を受け入れていった。それは何故かと言えば、ヴァンのあまりにも不自然な以前と今の態度が前から引っ掛かっていたのが合点が言ったからだとのことだ。

・・・ヴァンの露骨な態度を怪しむのは元々『ルーク』という存在に近く、少なからず接していた人物達だ。そして屋敷内にはガイ以外に人がいないなんてことはないなんて訳はなく、むしろ十単位で人が行き来している。そんな状況だからこそ、ヴァンの以前と今との露骨な違いを見ていた人など結構な割合で存在していた。

こちらの『ルーク』はガイも含めた上で、そんなヴァンについてを屋敷の人間に内密に聞いて回った。その中でガイだけは素っ気なく妥当ではないのですかというように答えたが、他の屋敷の人間は『ルーク』からのその問い掛けに揃って以前と違うというように答えた。主の子であり次期王位確実とされる人物からの問い掛けに嘘はつけないと思ったのと同時に、あまりにもヴァンが以前と違いすぎるという本音を漏らしたかったという言葉も添えられる形で。

ただそういった答えは返された物のこれ以上詳しく何かを聞きようもないと思ったこちらの『ルーク』はガイにも不自然さを感じてこそはいたが、そこを本人達に突っ込むことなく過ごしていた。自分がこうして記憶を失ったことに対して気を使われたのかだとか、以前との違いを突っ込んだらどうなるのか・・・答えがこないか誤魔化されるだけならまだしも、何か自分の予想以上の嫌な答えが返ってきた場合が恐ろしかったから聞けなかったのだと。

しかしこうして紫にルークから話を聞いた・・・ヴァンもそうだが、ガイも自分を騙すばかりか利用したり殺そうとしているという事を。

そして二人の事に関して納得したからこそ、以降の紫とルークの話もこちらの『ルーク』は受け入れていった。この世界はもう自分や他の者達にはどうしようもない滅びの運命が待っていて、ヴァン達により滅びるか預言のように滅びるかのどちらかになるのかが関の山の命運だと。

そこまで聞かされてこちらの『ルーク』は少しの間唖然としたが、そこからどうして自分の元にそれを話しに来たのかと聞かれたため・・・紫はルークの制止を振り切りながら、その用向きを伝えた。貴方の体をこちらのルークの為に欲しいと思ったからこちらに来たのだが、それでただ体だけもらって帰るのが嫌だというルークの希望からこういう風に話をしに来たのだと。

・・・その目的とルークの希望に、こちらの『ルーク』はとんだお人好しだと呆れたように笑いながら言った。自分の命が大事じゃないのか、俺だったらこの環境をどうにか改善してくれるなら他の奴の事なんか気にしないと。

だがルークが困ったようでいて悲し気な顔を浮かべながら、それをしてしまえば自分が自分で無くなるというように返すとこちらの『ルーク』は衝撃を受けた表情を浮かべた。何故そんな事を言えるのかというように。









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