異となることをした影響

・・・このファブレの屋敷という閉鎖空間に加えルークの世話係といった立場の使用人であるはずのガイだが、三日間の間だけでも基本的に距離を常に保ち自分からはルークへと近付こうとはしなかった。一応はルークと常に共にいなければならない訳ではないが、それでもその距離の空け方は出来る限りルークと接触を避けたいと言わんばかりの物だった。

ただそれでも一応は試しにとガイを三回ほど呼んで手伝ってほしいことを頼んだりしたが、その頼み自体には応えはするものの決して行儀のいい態度を崩そうとしない上に口調も熱のない棒読みに近い物で、やることをやり終えたらまた何かあればお呼びくださいとすぐさまに距離を空けて自分と共にいる時間を少しでも少なくしたいといった気持ちをルークは強く感じた。

こうもあからさまな姿は自分の知るガイとは本当に平行世界の別人なのだと感じると共に、危うさを否応なしにルークも感じざるを得なかった。本当に自分と言うかファブレに対して強く敵意を抱いていると共に、ヴァンに傾倒しているというのは決して大袈裟でも嘘でもないのだと。






(『実際に会ってみて分かったろ。あいつに信用なんて向けられるもんじゃねぇってよ』)
(・・・正直、あんな姿を見せられちゃな・・・)
そんなルークの頭の中にルークと同じ声でありながら自信に満ちた声が響き、ルークはその声に対して力なくも理解したとの声を返す。
(『・・・ま、いくら俺があいつの事をどうこう見てたところで、これから起きることに対して悪あがきくらいにしかならないんだよな・・・お前らの話からするとよ』)
(それは、な・・・否定出来ないどころか、俺の時より状況が悪いからどうしようもないとしか言えないんだよな・・・)
(『構わねぇよ、言葉を濁さなくてもよ。別に俺はあのおっさんやガイに対して夢を見れるような事をされた記憶はねぇし、なんなら話を聞いて納得までしちまったくらいだ・・・つっても、流石に俺の生まれを聞いちまった時は絶句しちまったがな』)
(・・・改めて聞くけど、本当にいいのか?全部が終わったら、もう完全に記憶も人格も消えて俺の中に入るなんて決めて・・・)
(『構わねぇっつったろ・・・話を聞く限りじゃどうにか俺用の肉体を用意出来た所で、全部うまくいかせても俺が何事もなく無事に生きられる可能性は相当に低いんだろ?・・・そんな世界で困難に立ち向かいながら生きるなんて柄じゃねぇし、昔のお前はどうだったかはともかく俺はそんな事になってまで頑張れる気なんかしねぇんだよ』)
(っ・・・)
そのままその声と頭の内で会話をしていくルークだが、その声のどこか諦めを帯びたようでいてあっさりとした返しに言葉を返せず苦い表情を浮かべた。






・・・今ルークと頭の内で会話をしている声は誰なのか、その答えはこちらの『ルーク』の人格だ。

何故こちらの『ルーク』の人格が残っているのかと言えば、ルークのたっての希望からであった。一方的に人格や体を消して奪うことの是非を考えたこともあるが、何よりこちらの『ルーク』の人物像を聞いたからこそだ。

ヴァンともガイとも例え偽りや迷いながらとはいえ関係を作れないこちらの『ルーク』はどうなっているのか・・・それをルークは紫に聞いた。そして返ってきた答えは昔のルークよりは知識こそは持ってはいるが、それはあくまでも自分しかいないからこそ自分で勉強したり動いてきたからで屋敷の中ではほぼ一人の状態で過ごしていることから、前のルークよりスレていて諦めに近い感情を常に抱いている物であるという答えだった。

その答えを聞いたルークはどうにかこちらの『ルーク』と話が出来ないかと紫に言った・・・後の会話でアッシュはこちらの『アッシュ』のことを詳しく聞いて人格を消し去ることを選んだが、自分はそんなことは簡単には出来ないと。そして紫は気分が乗らないとしながらも、ルークの要望通りにこちらの『ルーク』と話をする機会を与えた・・・自分達がいかな望みを持ってこちらの『ルーク』に接触した上で、こちらのオールドラントがどのような結末に至るのかについて話す機会を。









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