見えないものを見据えられるか

「・・・一応はティアも騙された側であり、ヴァンをどうにか止めたいという気持ち自体はあることはあるのは分かる。そして悩みに悩んでいるだろうといる事も分かるが・・・ガイもそうだが、今となって言えることとしては言い分を探したいんだろうと俺は見た」
「言い分・・・?」
アッシュはそんなティアもそうだがガイについても感じたことがあると言い分という単語を口にし、ノワールもそうだがルークも怪訝そうに眉を寄せる。
「・・・結局のところ、あの二人は根底ではヴァンを信じたいんだ。そしてあの二人はヴァンに直接取り付く島も無い程に拒絶されなければ、信じる気持ちを折ることは出来んだろう。だが二人はそこには気付いてはいない・・・そういった気持ちを自覚しきれていないんだ」
「・・・何で自覚しきれていないんだい?」
「今までのヴァンと違うヴァンを見て聞いたことが奴を信じてはいけないのではないかというように感じてだろうが、ガイに関してはそこに復讐を諦めきれない気持ちに加えて先程お前がホド出身だと言った時に下手な風なことは言えないとも思ったんだろう・・・同じホド出身という立場の人間相手に悪い風に見られたくはないが、だからと言って物分かりよく今までの全てを軽々と否定するような答えも返したくなく・・・そして根底としてヴァンに実際に会ってどうしたいか決めたいから、沈黙するしかないという考えになってだ」
「・・・色々ごちゃごちゃだったからあぁするしかあの男には選択肢はなかったってことかい・・・同情はしないけどなんというかって感じだね、そう聞くと・・・」
アッシュがその説明の為に今の二人の状態を説明していき、ノワールは何とも微妙そうに漏らす。決して同情が出来るような立場でもないが、だからと言ってその理由もまた微妙にしか思えない物だった為に。
「・・・まぁ最も厄介なのは自覚がないこともそうだが、自覚した所でより面倒になりかねんところだ。ガイの場合はそれを自覚したならファブレへの復讐をより一層目指すべきだと考えるだろう事もだが、お前達に一芝居打ってもらった事もあってヴァンに協力してもらってでもお前達を引き込もうとしに来るだろうが・・・」
「ハッキリ言ってゴメンだね・・・さっき話したことの中に嘘も入り交じらせてはいたけど、全部が全部嘘だとは言っていない。その中であの男が私らをどうにか助けたいみたいにまごついちゃいたけど、それで私らだけが謡将の同郷であの男からのお情けで助かるみたいな事なんてのは気持ちよくないからね」
「そう言ってもらえるのはありがたいが、ティアの場合はまた違う・・・あいつはただヴァンが自分の中でのいい兄であってほしいと願っているからこそ、一応は奴に近付ける可能性の高い俺達に付いてきてはいるが・・・そんな中でヴァンに優しくもさもこれが正しいのだと言わんばかりの声を向けられれば、十中八九奴は疑いを持つことを放棄してヴァンの側につく・・・兄さんがこう言うのだし、兄さんや私の考えを実行しない俺達や世界が間違っているのだと言った言い分を口にしてな」
「・・・なんだい、それは・・・あの娘に考えなんか一切ないじゃないか・・・」
「考えの放棄をしたいから言い分を探しているということだ・・・そしてそれはガイも同様だ」
続けるアッシュはガイとティアの二人のヴァンに対する気持ちがあるかもだが、その気持ちに引っ張られていて・・・考えを放棄しているのかと、面倒そうに表情を変える。









.
19/23ページ
スキ