見えないものを見据えられるか

・・・そうしてジェイドとティアが店を出た所で、ルークは深く息を吐き肩を落とす。
「あ~・・・あれで良かったのかな・・・」
「あぁ、問題ない。それと済まないな。こんな茶番に付き合わせてしまって」
「構わないさ。こっちはあの大佐殿からの手紙で頼まれたことをこなしただけだからね」
それから先程までの緊迫感から一転して三人は緩い様子で会話を交わす。






・・・今ノワールが口にしたが、この店で先程までの緊迫感溢れていてガイとティアにとって酷く居心地の悪い時間になったのは、練習こそしていないもののあらかじめこういう流れにしようと手紙で示し会わせていた即興の演劇舞台である。

これに関してはルークとジェイドがセントビナーでした会話を元にジェイドが案を出し、後にジェイドが内密にアッシュに話をした上でそれらをケセドニアの漆黒の翼達とやるとしたのである・・・ガイをこれから連れていくかに自分がガルディオスの生き残りと切り出すのか、それを判断するために一芝居打とうと。

ただ流石にノワール達がホド出身であることにはジェイドは触れることはせず、ただガイがホド出身であることを隠していてファブレで働いている節がある・・・そんな可能性があるからそちらから揺さぶりをかけてほしいと頼んだのだ。

この辺りはジェイドの目論見からノワール達が力を入れてくれるだろうと見立てられたのだが、効果は先程の通りどれだけ本気でどれだけ演技から発言したのか・・・ルーク達にも判断がつかないくらいの物だったのである。そのおかげでガイもまた少ないながらも様々に引き出せたのであるが・・・






「・・・というかこうして気兼ねなく話せるようになったから言うけれど、本気であの男言いたくないことを言わないようにで済ませようとし過ぎだったでしょ・・・正直、私らが身柄を引き受けるまでもなくここで殺したらどうなのかって本気で言いそうになったよ」
「・・・それを言わなかったのは俺達への一応の義理立てがあるからか?」
「まぁそれもあるさ。ただいっそ暴れてくれた方がよかったみたいにさっきは言ったけど、一応ここは私らのケセドニアでの拠点だからね。現状でここで暴れられてあんたら以外に目をつけられるのは私らとしては出来るだけ避けたいのさ・・・気持ちとしてはもういっそ言ってしまいたかったけどね・・・」
そんな空気の中でノワールがガイに対して感じたことを口にしていくのだが、その顔にはありありと疲れの色が映っていた。
「・・・そこまで言うなら率直に聞くが、ガイにどういう考えを抱いた?こうして初めてあいつと話したことからと言うのもそうだが、外から見た視点から意見を聞きたい」
「どうもこうもないさ。あれだけ色々言ってもう何か答えなきゃどうにもならないってのに、何も言いたくないってんなら自分の中で自己完結させなきゃ誰にも言う気にはならないんだろ。ただ救いがあるって言っていいのかは分からないけど言いたいって空気は少なからず感じたってことから、私らの話もあって迷ってはいるのは分かったさ・・・ただ今の話の後であんたらに付いていくってなっても、十中八九あれは復讐を諦めるなんて選択はしないだろうね」
「・・・そう言い切るのか」
「あぁ。よく話に出るだろ。なんでこれを止めろと言ってるのにそうしないどころか、冗談ですらそうするとは頑として口にしないなんて奴がいるってのは・・・そういった奴ってのは自分がいくら理屈じゃこれが正しいって分かっても止めれないってどこかで気付いてるってのに加えて、周りにこうするって言ったじゃないかって言質を取ったからそうしろみたいに言われるのを避けるのが主らしいんだよ。私はあくまで聞いただけだが・・・それに当てはめると分かるだろ?あの男が復讐を止める可能性がどれだけ低いかは」
「・・・あぁ。確かにあの様子を見る限りにお前の話を当て嵌めれば、ガイが簡単に復讐を諦められないということはな・・・」
アッシュはそんなノワールにガイについてを聞くと、復讐を諦めるような事はないだろうと自身の経験からの例え話も交えて返してきたことに、アッシュもそうだがルークも苦い顔を浮かべて納得するしかなかった。あの様子からして、ガイが復讐を止めようとしているとは今の話から考えれば有り得る筈がないと。









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