見えないものを見据えられるか

「・・・まぁ貴方もむざむざ殺されてやるような事はしないでしょうが、今それを許してしまうことは我々にとっては避けねばならない事態になります。ですのでここで貴方とお別れになりますが・・・」
「どうするんだい?マルクトの領事館に連れていくのかい?」
「現状ではそれが妥当かとは思いますが・・・まさか貴女方がガイを受け入れるとでも言うのですか?」
「そのまさかさ」
「え・・・?」
そんなナタリアについてから話をガイを置いておく方向に進めるジェイドに、ノワールが自分が引き受けると切り出したことにガイは呆けた声を漏らす。意外な申し出が出てきたことに。
「勘違いしないでほしいね。私があんたを引き受けるって言ったのはマルクトを信用出来ないってより、変にあんたがどこに行ったのかを知らせないようにするためさ・・・謡将がもし仮にあんたが捕まったって知って、あんたを解放しに来ようとしてもあんたの居場所や私らのアジトが分からなきゃどうしようもないだろうってね」
「っ!」
だがノワールが冷静に口にしたその理由にガイは目を見開いた。自分に対してそれだけ警戒をしている上に、アジトの場所が分からねば確かにヴァン達も助けようはないと。
「・・・そういったようにしていただけるのはありがたく思いますが、よろしいのですか?我々ではないにしても貴女方のアジトを明かすような事をして」
「勿論居場所に関しては誤魔化しはさせてはもらうけれど、もしも謡将がこの男を助けに来てホド以上の惨劇を引き起こすような事をしたならと考えたなら気分が良くないからね。だからせめてそれを避けたいって気持ちで言い出した事だから気にしなくていいよ」
「っ!」
ジェイドも本当にいいのかと確認を向けると、ノワールの答えにガイはたまらず表情を苦渋に歪めた・・・決して今のガイの状態ではヴァン達に協力しないと目の前のノワール達に断言出来るとは、自身も感じてはいないのだろう。
「・・・と言うわけであんたには私らの元に来てもらうけど、大人しくしてもらうよ」
「・・・はい・・・」
そしてノワールがいよいよと連れていくと口にするのだが、ガイは全く抵抗も抗議もせずに力なく頷くしかなかった・・・






・・・そうして全く力のないガイがヨークとウルシーの二人に連れて行かれていくのをルーク達は見届けた。
「・・・さて・・・なんというか、案外あっさり終わりましたね。あれだけグズグズ自分の事を言いたくないとしていた割には最後の方は諦めがやたらと良かったですが」
「同郷、それもホドという場の人間との相対もそうだが・・・何より敵対をしたくないと考えていたんだろう。だがそれと同時にファブレへの復讐心を捨てることも出来ない上で嘘でも大丈夫と取り繕う言葉が吐けなかったから、せめてと何も言わない代わりに抵抗せずに終わらせたんだろうな」
「・・・あそこまで来たんならもういっそ開き直ってくれた方がまだ良かったと思うんだけどな、色々と・・・」
そうしてジェイドにアッシュにルークと順々にガイについての考えを口にしていくのだが、前二人と違いルークは頭をかきつつも苦さを少し滲み出させていた。あそこまで自身の考えを口にする事を避けようとしていたことに。









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