異となることをした影響

・・・そんなジェイドから、現在ダアトにいるアッシュへと場面は移る。












「・・・想像以上にキツい物だな、こうして戻ってきた上でのここでの神託の盾の生活は・・・」
・・・正規の神託の盾と違い、謡将としての特権を利用してヴァン率いる神託の盾だけが集められた集合住宅の部屋の中。
アッシュは薄暗い自分の部屋のベッドに腰掛けながらなんとも言いがたそうな複雑さを抱いていた。この平行世界の神託の盾での生活に。
「自分が前と違い、人目をはばかる状態でとは言え兵を任せられる立場になっていることに、リグレット達に頼りにされているということ・・・紫から話を聞いた上で俺に三十年分の積み重ねと、こちらの俺の記憶が無ければボロが出ていただろうな。最も、この体の俺には少し悪いことをしたという気持ちにはなるがな・・・」
そのまま何が違うかもそうだが、こちらの自分に対する申し訳無いという気持ちをアッシュは漏らす。






・・・このオールドラントにおいてヴァンの影響が強いことに神託の盾においての自分の立場が前の自分がいかに違うかもそうだが、こちらのアッシュの人格を記憶以外消し去ることも紫から言い渡されていた。

それは何故かと言えば、こちらのアッシュとの折り合いがつかない可能性の方が相当に高いと言われた為だが・・・その判断が間違っていないと感じると共に、何とも言えない気持ちを味わう事になった。何故かと言えば、こちらのアッシュがヴァンに対する忠義というか信頼の度合いが凄まじかったからである。

紫からいかにヴァンへの想いがこちらのアッシュが強いかを聞かされてはいたが、実際に人格を消されて記憶のみとなったその記憶に触れてその凄まじさをアッシュは知った。本当にこんな自分がヴァンと敵対するのかと疑い、またヴァンも自分が向けていたよりもやけに親密な態度をこちらの自分に向けていたからこそこうなったのだと感じて。

・・・別にアッシュとしては、自分がヴァンから離れた事については後悔はしていない。あぁしていなければ今頃元のオールドラントがどうなっていたか、良くない方面にしか想像は出来ない為に。そしてその上でこちらのアッシュの気持ちだとかに関しては共感が出来ないというよりは、自分と違いが大きすぎてむしろ自分と同じ顔の他人の記憶を得てしまった気分になったくらいだが・・・だからこそこちらのアッシュに対しての申し訳無さを多少なりにも感じていた。別人だと思うからと言うのもあるが、例えすがる気持ちが大きかろうが歪んでいようがヴァンに対する想いの強さを一方的に消してしまったことに対して。

無論、大局的に見てこちらのアッシュの厄介さは十二分に記憶を見て理解しているし、人格が消えてなければ今頃どうなっていたかと考えればこうしておいてくれて良かったとは思ってはいる。ただやはり『アッシュ』として自分もこうなるかもしれなかったのかもとこちらのアッシュの記憶を思い返せば思い返すほど、微妙な気持ちにならざるを得なかった。ヴァンの行動による危険性を認識出来た筈なのにヴァンの方を選び、オールドラントを滅ぼす事をほぼ躊躇いなく選べるその精神性が自分とは重ならないと強く思った為に。









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