・・・八雲紫によってルークの肉体を得るため、ルークと共に平行世界へと向かうことに決めたアッシュとジェイド。それでしばらく話をした後に平行世界のオールドラントの過去の自分の体へと、三人は紫により送られた。


















「・・・若い体というのがこれほどに有りがたいものだとは・・・確かにこれなら歳を取りたくないと言うのも分かりますね・・・」
・・・マルクトのグランコクマの自身に家のベッドに腰掛け、手を握り開きしながらジェイドは実感していた。若い頃の自分の体があまりにも良好であり、若くある事がどれだけ価値のある事なのかと。
「・・・この三日間、下手にボロが出ないようにと慎重に回りを確認しながら動いてはいましたが・・・どうやら私と言うかマルクトの方は然程違いは無いようですね。この辺りは謡将がこちらに関わってないからなんでしょうね」
そのままジェイドはこの三日で自分の周りは体して自分の知る昔とは変わらないと、その理由に関してをヴァンと関係がないからだと見当をつけるが同時に表情を苦くする。
「今の二人なら大丈夫だとは思いますが、出来ることなら変わりたいものですね。あの二人との立場と言うか、演技をしなくてもいい状態か否かを・・・特にアッシュはかなり苦しい状態を強いられているでしょうからね・・・」
その理由は自分ではなくルークとアッシュの二人に関して・・・特にアッシュが今の自分らしくない演技を強いられる事にであり、自分がそれを受ける立場の方が気持ちとしては楽だったと。
「・・・いえ、それを言ってはいけませんね。あの二人もそれを承知でここに来たわけですし・・・ルークにとって始まりの日である謡将を襲いにティアがファブレに来る日はおおよそ一月後の事・・・それまでは慣れもそうですし、我慢も必要ですね」
しかしすぐにジェイドは気を取り直して考えを変える。一月後に迫った始まりの為に、我慢に慣れは必要なことなのだと。






・・・この一月後に始まりと言うのは、紫が設けた準備期間である。この平行世界のオールドラントとアッシュとジェイドの二人に若い頃の体や、周りの環境に馴れてもらうためのだ。

本当ならもう少し長い時間を準備に使いたいとジェイドは言ったが、ルークを待っている人物が戻ってくるまでの時間が長くなりすぎると自分の方に八つ当たりを向けてくる可能性が高いと紫が言って一月という時間がギリギリであり、譲歩出来る時間だと言われた為に仕方無いとアッシュ共々引き下がるしかなかった。だが・・・






「・・・ただ、あぁして本当にルークと顔を合わせて話が出来た上に肉体を得るための手助けが出来るだなんて思いもしませんでしたからね・・・その事を考えれば、これくらいの事は受け入れねばなりませんね」
しかしすぐにジェイドは満足そうな微笑みを浮かべる。ルークを話が出来た上で助けが出来るという喜びに。






・・・アッシュが戻ってきて三十年。ルークに対する浮かない気持ちを抱えながら生きてきたジェイドにとって、今回ルークと話をした上で協力しあえることは喜ばしいことであった。

ただ欲を言うなら肉体を得た上でこのオールドラントを救えたなら一緒にこの世界で暮らしたいという考えもなかった訳ではないが、もう居場所をルークは幻想郷に作っていることにオールドラントで暮らしても大丈夫だとの保証が出来にくいと言うことから、アッシュに幻想郷にいてもらう方がいいと自分に言い聞かせる事も含めて考えを強く持った。

・・・もうこの旅が終われば、正真正銘ルークとは会えなくなるだろうことはジェイドも承知している。幻想郷に行く手段などジェイドは持ち合わせていないしどこにあるかも分からず、ましてや少し話しただけだが紫がルークと会いたいだろうと自分達の為に親切心だけで動いてくれるようなタイプではないことは承知している。だがそれでも自分の行動がルークの為になるならという気持ちが強いジェイドにとっては、それでも良かった。この三十年に溜まった想いはそんなに軽くも浅くもないからこそ、ルークが報われるなら自分達の元からいなくなってもそれでいいと思うからこそ・・・









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